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新人魔女の貴族教育(6)

「いいですか、リッカ様。お茶会は比較的気軽な社交場ですが、だからと言って、気を抜いて良いわけではありませんのよ。挨拶に始まり、お茶やお菓子の感想、会話の内容にまで常に気を配っていなければなりません」


 サラはそこで言葉を切り、紅茶を一口口に含む。そして一息ついてから再び口を開いた。


「では、気を取り直して、講義を続けますわよ。先ほどエルナ様には(わたくし)から質問をさせて頂きましたが、社交というのは、相手から質問されるばかりではありません。些細な情報を会話の流れや相手の出方から読み取り、自分にとって有益な情報を引き出すことが大切なのです。では、リッカ様。何か(わたくし)にお話してくださいませ」

「は、話ですか?」

「そうです。私との会話から、ご自身が求める答えを引き出してごらんなさい」


 リッカは、サラの指示にしばしの間固まった。リッカにそんな高度なことが出来るはずがないのだ。そもそもリッカは、サラに対して興味がない。だから、サラから聞きたいと思う話題も特に思い浮かばない。しかしそれでは、またサラがヒステリックに喚き始めるかもしれない。だから、リッカは必死に考えを巡らせた。そして一つ思いつくと、意を決して口を開く。


「こ、このアップルパイは本当に美味しいですね。これが手作りだなんて、本当に凄いです! わたしは料理はあまり得意ではないので、よくお店に買いに行くのですが、サラ先生は如何ですか? やはりご自分でお作りになれると、お店へは行かれないのでしょうか?」


 リッカの質問に、サラは目を丸くする。想定外の話題に戸惑ったようだ。だが、サラはしっかりと答える。


「お料理は(わたくし)、得意ですの。お菓子もよく作りますのよ。自身で作ると添加物を気にしなくても良いので、本当に安心して作れますものね」

「そ、そうなのですね……。では、先生はあまり売られている物は口にされないのでしょうか? わたし、先生のような素敵な方がどのようなお店を贔屓になさっているのか、是非とも知りたいと思ったのですけれど……」


 サラは満更でもなさそうな表情を浮かべると、う〜んと考え込む。


「そうですわねぇ……。全く頂かないこともないですわよ。確かに王宮御用達のお店は幾つか贔屓にしていますわ。ですが、店に足を運んだ事はございませんの。いつも料理長が我が家へ来てくださいますから」


 サラはそう言うと、チラリと皿の上のアップルパイへ目を向ける。その視線をリッカは見逃さなかった。

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