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新人魔女の貴族教育(3)

 貴族の間では、お茶会が頻繁に開催される。幼少期の頃から、歳の近いものとままごとならぬ、お茶会ごっこをするほどに貴族の間では当たり前の事なのだ。


 それは、リッカも例外ではなかった。高位貴族であることもあり、定期的に父や母の来客が絶えない家だ。来客に連れられてその家の子女が来ることもあった。そんな時は必ずと言って良いほど、「子供は子供同士で」と両親から言われ、リッカは子供たちのお茶会をすることになった。


 リッカは、貴族子女が集まる場が嫌いだった。というよりも、幼い子供特有の他人の悪口を囃し立てるような陰険な空気が嫌で仕方なかった。しかし、それなりの年頃になれば親にくっついてやって来る子供も減り、リッカは苦手なお茶会ごっこから解放された。


 だが、そんな時期は束の間で、最近は親のお茶会への参加を求められるようになっていた。ごっこではない本物のお茶会は、貴族の社交の場として重要な役割を果たす。それは、家の力を誇示する場であり、交渉の場でもあった。


 男性貴族もお茶会をすることもあるが、それよりも頻繁に貴族女性たちはお茶会を開く。ペチャクチャとおしゃべりをしながら、相手の腹の中を探り合い、客人の家柄やら趣味やらを聞き出し、家同士の力関係を図る。そして時には当然のごとく子供達の話を出して、将来的な縁組を考える。リッカは、そんな貴族女性のお茶会が苦手だった。


 母は当然お茶会の意味を分かっているので、年頃になったリッカを同席させたがったが、リッカとしては親たちのおしゃべりにも縁組にもそれほど興味がない。なるべくならば参加したくなかった。しかし、母が開くお茶会には参加せねばならない。そんな時、リッカは気が重いままに社交辞令の笑みを貼り付けて、お茶会に参加する。


 本日のお茶会講義は、そんなつまらない大人のお茶会の再現だった。リッカが嘘くさい笑みを浮かべ待っていると、テーブルに香りの良い紅茶が注がれたティーカップと、アップルパイが置かれる。


「さぁ、頂きましょう。お茶会では、まず主催者がお茶とお菓子を口にして、問題ないことを示しながら客人に勧めるのですよ」


 サラはそう言うとニコリと微笑み、優雅な仕草でティーカップを口元に近づける。ゆっくりと一口飲んで見せてから、アップルパイに手をのばす。アップルパイを一口大に切り分けると口に運んだ。サラは口の中のものを嚥下すると、満足げに微笑む。


「美味しく出来ていましてよ」

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