新人魔女とお姉様(8)
魔石の入った袋を抱えたリッカはエルナの部屋へ戻ると、袋からいくつかの魔石を取り出し机に並べた。リッカが取り出したそれに見覚えがあったエルナは、軽く小首を傾げる。
「あら。これは魔法石ではありませんか? どうされたのです? こんなにたくさん。魔法のお得意なリッカさんにはあまり必要のないものだと思いますけど?」
リッカはエルナの問いに、嬉しそうに説明を始めた。
「実はこれ、王宮の魔法石なんです。お姉様は知っていましたか? 王宮で必要とする魔法の類は、全て大賢者様が担うことになっているんですって。王宮の魔法石に魔力を充填するのも、大賢者様のお仕事なのですよ」
リッカの話に、エルナは目を丸くして驚いた。
「まぁ、そうなのですか? 私はてっきり王宮のどこかに専門の部署があるのだとばかり……。でも、王宮は広いですよ。生活用魔法石だけでも幾つ使われていることか……。それをネージュ様お一人で?」
エルナがそう言うと、リッカはうんうんと頷く。実はリッカも同じことを思った。魔力充填は下級魔法使いでも請け負える簡単な仕事だが、数が多ければ骨が折れる。エルナの言った通り、王宮は広大だ。それを一人で請け負うのは、とても大変だろう。だが、大賢者という存在は、それすらも容易にこなせてしまう者という事なのだろう。
エルナが感心していると、リッカはテーブルの上に出した魔法石を手に持ち、エルナの前に掲げる。そしてニヤリと笑みを浮かべた。
「その大賢者様の仕事を、わたしは任されたのです!」
リッカはそう言うと、わかりやすく胸を張る。そして、昨日のリゼとのやりとりをエルナに語って聞かせた。話を聞き終えたエルナは何と言えば良いのか分からず、複雑な表情を浮かべる。
「まぁ、ではリッカさんはネージュ様に、大変なお仕事を任されてしまったのですね。お勉強もあるのに大丈夫でしょうか? 私もお手伝い出来れば良いのですけれど、生憎と魔法は……」
エルナがそう言うと、リッカは首を横に振る。
「わたしがやりたいと言ったのです。勉強漬けの日々では息が詰まるので。大丈夫です。少しずつやれば。魔石の充填なんて危険でも大変でもありませんから」
「さすがは、ネージュ・マグノリア様のお弟子さんですこと。お仕事熱心なところがそっくりです」
エルナはそう言うと、ふふっと笑う。リッカもつられて笑顔になる。こうして姉妹となった二人は、束の間の時間おしゃべりに花を咲かせるのであった。




