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新人魔女と精霊のペンダント(4)

 リッカは羊皮紙を取り出すと、エルナにペンを差し出した。エルナが受け取りのサインをさらりと署名する。これで依頼完了だ。


 リッカは羊皮紙を丸めて筒状にすると、先ほど受け取った空瓶のそばに置いた。それから、エルナに向かって一礼する。


 エルナも席を立ち軽く頭を下げたちょうどその時、奥の部屋からリゼが出てきた。大きな欠伸をしながら、眠たげに目を擦っている。先ほど寝癖でボサボサだった髪は、魔装でしっかりと整えられていた。今日の髪型はポニーテールらしい。


 リゼを見た途端、エルナは顔を輝かせた。そして、彼女は深々と頭を垂れると丁寧に挨拶をした。それを見たリゼは、目の前にいる人物に驚いたように目を大きく見開いた。


「エルナさん!」


 リゼが顔を綻ばせパタパタと駆け寄る。そんなリゼの姿を見て、リッカは思わず目をパチパチと瞬かせてしまった。いつも気怠げな態度をしている人が、別人のように明るく元気なのだ。驚くなと言う方が無理である。


 一方のエルナはとても優しい笑みを浮かべている。まるで聖母のような眼差しだ。


「エルナさん、あなたがどうしてここに?」


 リゼが不思議そうに首を傾げる。


「マリアンヌ様の使いで参りました」

「そうだったのですか。私はてっきり姉上が来るものだと思っていました。あなたが来られると知っていれば、助手になど任せず、私がお相手しましたのに」


 リゼは心底残念そうな表情を見せた。それを見ていたリッカは、ふっと苦笑いを漏らす。二人の会話を聞く限り、リゼはエルナに少なからず好意を抱いているようだ。


 リゼの助手になってまだ日が浅いが、彼がここまで感情を表に出すのは珍しいことだった。エルナと話すリゼの姿は、元々の類稀なる容姿も相まって、まるで恋する乙女のようで可愛らしく見える。普段はお目にかかれないような彼の姿に、リッカは少しばかり驚いてしまった。


 エルナとの話に夢中になっているリゼに声をかけるのは気が引けたが、仕事中であることを思い出し、リッカはコホンと咳払いをする。


「あのー、お話し中すみません。こちらはもう依頼完了ということでよろしいでしょうか? 実はまだお代を頂いていないのですが……」


 リッカの言葉を聞いて、ようやく我にかえったのか、リゼはハッとしたように振り返った。机の上に揃えて置いてある空瓶と筒状に丸めた羊皮紙にチラリと視線を向ける。


「ああ、そうか。では……」


 リゼはそう言うと、筒状の羊皮紙に軽く指を添えた。

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