新人魔女とお姉様(6)
朝食を終えたリッカはエルナの私室に招かれていた。
数日前までは空き部屋だった場所がエルナの部屋だった。部屋にはベッドと机、椅子、クローゼット、ミニキッチンが設られ、それらは全て白で統一されている。全体的に明るい印象を与えていた。家具の配置は時間のないエルナに代わり母が決めたと聞いている。
「家具の配置に不便はないですか?」
「いいえ。とても素敵なお部屋です。ここに住まわせて頂けると思うと、嬉しくてたまりません」
エルナはぐるりと周囲を見渡すと嬉しそうに微笑んだ。その様子を見てリッカも思わず笑みをこぼす。
「そう言って頂けると私も嬉しいです。今日から貴族教育、一緒に頑張りましょうね」
リッカがそう言うと、エルナはふふっと笑みをこぼす。
「リッカさ……んは、私にお付き合いすることになって大変ですけれど、本当に良いのですか?」
リッカはエルナの言葉に苦笑いを浮かべる。
「良いも何も、お父様とお母様の言うことには逆らえませんから」
リッカはそう言いながら、ため息をつく。そんな義妹を見かねたエルナは「お茶でも淹れましょう」と声をかけると、ミニキッチンに立ち、お茶の用意を始めた。
「お部屋にキッチンを入れたのですね」
リッカが手伝おうと席を立つと、エルナはそれを手で制して微笑む。そして手早く二人分のお茶を用意するとテーブルの上に置いた。
リッカとエルナはのんびりとお茶を飲み始める。午後からは貴族教育が始まるが、朝食を終えたばかりのこの時間は、しばしの休憩時間だ。
「ロレー……いえ、お義母様はお部屋にキッチンを入れることを渋っていらしたのですけれど、お茶はやはり自分で淹れたいのでと、少々我儘を言ってしまいました」
エルナは申し訳なさそうにそう言うと、ふぅっと一息ついた。そんな様子にリッカは首を振る。
「それくらいのこと、なんでもないですよ。自分のお部屋ですもの。寛げる空間であって良いと思います」
「そう……でしょうか」
リッカの言葉に、エルナはホッとしたような表情を浮かべた。そんな様子にリッカは微笑む。そして紅茶を口に運んだ後、気になっていたことを尋ねた。
「ところで……あの……エルナ………お姉様」
リッカが遠慮がちにエルナの名前を呼ぶと、エルナも遠慮がちに微笑む。二人ともまだ新しい関係性に慣れず、思わず顔を見合わせて固まった笑みを交わす。
「えっと……わたし、お姉様に謝らなければならないことがあって……」
「何ですか?」