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新人魔女とお姉様(3)

 エルナはそう言って苦笑いを浮かべた。リッカもエルナの言葉に苦笑する。そんな二人の会話を黙って聞いていたロレーヌが、不意に口を開いた。


「エルナ」


 リッカとエルナの視線がロレーヌに向けられる。ロレーヌはエルナを見つめていた。


「は、はい。ロレーヌ様。何でございましょう?」


 エルナの返事を聞くとロレーヌは穏やかな笑みを見せる。しかし、その表情にエルナは背筋が伸びる思いがした。優しい笑みのはずなのに、どこか鋭いものがある。何か気に障ることをしてしまったのだろうかと、不安にかられる。


 リッカはそんな母の様子を固唾を飲んで見守っていた。


「貴女はこのスヴァルト家の娘となったのですよ」

「は、はい……」

「でしたら、(わたくし)のことを『ロレーヌ様』などと呼んではなりません」

「……え?」


 二人の口から驚きの声が漏れる。その様子を見て、ロレーヌはコロコロと笑った。そして更に話を続ける。


「だってそうでしょう。この家の娘になったのですから、(わたくし)のことはお義母(かあ)様と呼ぶべきでしょう?」


 ロレーヌはさも当然だと言わんばかりにそう告げる。


 先日会ったばかりの人間をいきなり母と呼べと言われて素直に頷けるはずがない。エルナはオロオロしながら助けを求めるようにリッカに視線を向けた。


 しかし、頼みの綱のリッカもまた困惑するばかりで何も言えないでいた。だが、ロレーヌはそんな事などお構いなしとばかりに言葉を続けた。


「エルナ」

「は、はい。何でしょうか。お、お義母(かあ)様?」


 恐る恐るロレーヌの呼びかけに応えるエルナの表情は困惑に満ちている。その様子を見てリッカは頭を抱えたくなりながらも、母の言葉を遮ることは躊躇われ、ため息を吐いた。


「ふふ。それでいいわ。貴女は皇太子妃になるのですから、私たちよりも遙かに高い身分になるのです。私のことをロレーヌと気安く呼べるくらいにならなくてはいけませんよ」

「え……あの……そ、そんな……それはさすがに……」


 戸惑うエルナを見てロレーヌが笑みを深める。


「あら? 人の上に立つのです。それくらい出来なくてどうします」


 ロレーヌの言葉にエルナは青ざめる。だが、母の言う通り皇太子妃ともなれば、これからは相応の威厳を示さなければならないだろう。


 エルナは助けを求めるようにリッカの方を向いたが、母の言っていることは何一つ間違っていない。リッカは反論は無理だとばかりに力無く首を振る。そんなリッカの反応にエルナは項垂れ、スカートを握りしめた。

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