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新人魔女とお姉様(1)

 翌日、部屋の扉をノックする音でリッカは目を覚ました。


「ふぁい……」


 眠い目をこすりながら、扉の前まで行くと、そこにはニコリと微笑むエルナの姿があった。


「あ、エルナさん。おはようございます」

「おはようございます。リッカ様。まだ、おやすみでしたか?」


 リッカの寝起き姿に、エルナはクスッと笑った。リッカは自分の姿を見下ろして顔が熱くなる。髪はボサボサで、寝巻きも皺だらけ。とてもではないが人前に出られる姿ではない。リッカは慌てて部屋へ引っ込むと身支度を整え、改めてエルナを部屋へ招き入れた。


「ご、ごめんなさい。お待たせしてしまって……。それでエルナさん、朝から一体どうされたのですか?」


 リッカが尋ねると、エルナはペコリと頭を下げた。


「起こしてしまって申し訳ございませんリッカ様。いつも朝早くに工房へいらっしゃるので、てっきり起きていらっしゃるとばかり……それで、もし良ければ食堂へご一緒しませんかと、お誘いにきたのです」


 エルナの言葉にリッカは納得した。来たばかりの他人の屋敷だ。一人で動くには心細いのだろう。リッカは笑顔で頷いた。


「そうですね! 一緒に行きましょう」


 二人連れ立って食堂へ向かうと、そこにはすでに母の姿があり、数名の使用人達が忙しそうに動き回っていた。皆一様に、エルナの姿を認めると軽く会釈をする。エルナも会釈を返すと、彼らの方へ歩み寄って声をかけた。


「こちらを運べば宜しいのですか?」


 エルナが尋ねると、使用人達は目を丸くして動きを止めた。リッカも驚きに固まる。使用人達は、困惑した表情でとんでもないといわんばかりに手を横に振る。リッカは慌ててエルナの手を取り声をかける。


「え、エルナさん。我が家では、そういったことはお任せしているのですよ」


 リッカの声を聞いて、使用人達はそれぞれにホッと安堵の表情になり、仕事の手を早める。リッカの言葉にエルナもハッとした表情を見せた。


「私、ついいつもの様に……皆様にやっていただくのは、なんだか落ち着きませんね」


 エルナはそう言って恥ずかしそうに頰に手を当てた。リッカはそんなエルナに苦笑いを見せる。家の中のことを使用人に任せることは、リッカにとっては当たり前の事だ。だが、エルナにとっては当たり前ではない。これまではあちら側だったのだから。その事はリッカにも分かっていた。しかし、これからはそれが当たり前になる。


 エルナのスヴァルト家での生活はこうして始まった。

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