新人魔女の休職相談(5)
リゼが真面目な顔で指摘するので、リッカは、自分の立ち振る舞いはそんなにも酷かったのかと少し傷ついた。
「わ、わたしだってあの時はかなり動揺していたんですよ」
リゼは頷く。
「そうであろうな。そうでなければ、あの様な酷い謁見になるはずがない」
リゼにはっきりと言われ、リッカはさらに落ち込む。
「すみません……」
「だが、そうなると君もしばらくの間はここへ来るのは控えて、貴族教育に専念した方が良かろうな」
リゼにそう言われ、リッカはさらに項垂れた。この結論については薄々分かってはいたが、いざリゼの口から言われるとショックが大きい。自分はそれほどまでにこの工房での作業を楽しみにしていたのだと、改めて気づかされた。
「やはりそうですよね?」
リッカは眉尻を下げ、残念そうな顔をした。そんなリッカを見てリゼはため息を吐く。
「私は、仕事と貴族教育の両立は難しかろうと言っているだけだが? 君もそう思っているから、私に今後のことを尋ねたのではないのか?」
リッカは項垂れたまま、小さな声で答えた。
「それはそうですが……でも、わたしはここでの作業が好きなんです。何をやっても自分が成長していく気がするんです。その代わりが貴族教育漬けの日々だなんて息が詰まってしまいます。リゼさんからお叱りを受けることは自分の将来に繋がりますが、貴族教育を受け直したところで、わたしが立派な貴族になれるとは思えません」
リッカは、リゼに思っていることを伝えた。リゼは眉間に皺を寄せてリッカの言葉を聞いていたが、やがて再び大きなため息を一つ吐いて、口を開いた。
「それでは、君は陛下との約束を反故にするつもりか?」
リゼの言葉に、リッカはキョトンとした顔をした。リゼは呆れ顔だ。
「君は陛下とスヴァルト家の次期当主となることを約束したのではなかったか?」
「しましたけど……わたしだってそれなりの社交は出来ますし、今更がっつり貴族教育を受けなくても大丈夫ですよ」
リッカが苦笑いを浮かべると、リゼは呆れ顔で頭に手を当てた。
「君は本当に馬鹿なのではないか?」
辛辣な言葉にリッカは閉口する。リゼは「全く……」と呟くと、リッカに問いかける。
「君は、王家と縁戚になる意味を分かっているのか?」
リゼに問われ、リッカは首を傾げた。皇太子の婚約者となるエルナがスヴァルト家の養女になるということは、スヴァルト家と王家の間に繋がりが出来るということだ。それは分かっているが……。




