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新人魔女の休職相談(3)

「やめえや。そないにいけずな言い方をせんでええやろ。あんたも気にすることないで。リゼラルブは、エルナ・オルソイが居らんようになって、ちぃと寂しいだけやから」

「グリム、何を言っている! 余計なことを言うな!」


 リゼが大きな声を出すと、グリムはケタケタと笑う。リゼとグリムは基本淡々としているので、これまでリッカは言い争いをしているところなど見たことがなかった。珍しすぎる光景に呆気に取られてしまう。


 リゼが一つ咳払いをしてから続けた。


「良いか? 確かに私は君を雇っているし、他の者よりは気を許しているかも知れぬ。だが、最低限の礼儀は弁えろ」


 リゼの言葉にリッカは何も言えず黙り込んでしまう。実際、最初の頃よりもリゼとの距離は縮まったように思う。それなりに上手くやれていると思っていた。しかし、ピシャリと言い放たれ、リゼとの関係が良好だと思っていたのは、自分の勝手な思い込みに過ぎなかったのだと、リッカはさらに気持ちが重たくなる。


「すみません……」


 リッカはシュンと首を垂れて、再び謝った。その声は、消え入りそうなほどに小さい。そんなリッカを見て、リゼは深々とため息を吐く。


 リッカがしょぼんとしていると、リゼは再びため息を零す。しばし二人の間に沈黙が流れる。やがて、いやに陽気な声でグリムが二人の間に割り込んで来た。


「今までが浮かれすぎやったんや。このいけずな対応が本来のリゼラルブやから、気にすることあらへん。軽く聞き流しておけばええんや」


 グリムが再びリッカに助言すると、リゼは「うるさい」とグリムを睨む。


「全く……なんておしゃべりな奴なんだ」


 リゼがむすっとした様子で言うと、グリムはケタケタと笑って返す。


 リッカがそんな二人のやり取りを見ていると、リゼがコホンと一つ咳払いをした。そして、何事もなかったかのようにリッカに告げる。


「とにかく、今後素材の保管は個人の責任で行うように」

「はい……申し訳ありませんでした」


 リッカが申し訳なさそうに謝ると、リゼは気まずそうな顔をする。そして再び息を吐いた。


「……もう良い」


 リゼは面倒くさくなったのか、この話は終いだとでも言うように、手をヒラヒラと振る。リッカは最後にもう一度反省の意を込めて深く頭を下げた。それから顔を上げると、おずおずとリゼに尋ねる。


「あ、あの。それでエルナさんが居ないというのは……」


 リゼはチラリと横目でリッカを見ると、ため息交じりでこう告げたのだった。

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