新人魔女の重大ミッション(6)
リッカのその言葉を聞くと、マリアンヌは嬉しそうに笑う。
「リッカ嬢。貴女はきっとリゼラルブをたてる素敵な妃になるわ。今から楽しみね」
「ありがとう存じます。……しかしながら、マリアンヌ陛下。リゼラルブ様を心から慕い、リゼラルブ様に幸せをもたらすお妃様の座には、わたしよりも相応しい方がおります故、是非ともそちらの方をお選び頂きたく存じます」
再び声を上げたリッカに、リゼは眉間に皺を寄せてため息をついた。リゼのため息と気配から、後で叱られるような気がして思わず身を固くしてしまう。リッカはギュッと両の手を握りしめた。
「リゼラルブを心から慕い、幸せをもたらす女性……それは一体どなたなのかしら? 貴女以上にお家柄もご縁も申し分ない方を私は存じ上げないのだけれど?」
自身の考えを否定されたと思ったマリアンヌからは固く冷たい声がした。
リッカは一瞬息が止まりそうになる。国の最高権力者に、今まさに楯突いているのだ。致し方ない。しかし、ここで怯むわけにはいかない。リッカはゴクリと唾を飲み込むと、勇気を振り絞って口を開いた。
「恐れながら申し上げます」
「何かしら?」
リッカの発言にマリアンヌは凍りつきそうな笑顔のままでそう聞き返す。リゼは何も言うつもりはないようだ。それならば、自身で最後まで言葉を紡ぐしかない。グッと拳を握り直す。
「この国でリゼラルブ様のお相手に一番相応しい方は、陛下の侍女エルナさんです」
リッカの発言にマリアンヌとリゼが固まる。マリアンヌは目を見開いてリッカを見つめた。リゼは絶望的な顔になる。マリアンヌがエルナのことを知らないはずがない。しばらくすると、マリアンヌはゆっくり口元に優雅な笑みをたたえた。しかし、目は笑っていない。
「エルナって……貴女は一介の侍女が……これから皇太子となり、国を率いていく立場となるリゼラルブの妃が、侍女で良いとそう言うの?」
「……はい」
リッカの返答にマリアンヌは明らかに眉を寄せた。
「……そう。でもそれはどうかしら? あの子は確かにいい子だけれど……宰相の娘である貴女よりも皇太子妃に相応しいと私は思えないのですけれど? あの子には家柄という後ろ盾は無い。他者よりも優れた魔力の使い手でもない。平民の結婚ならばいざ知らず、王家の婚姻に侍女は相応しくないのではなくて? ねぇ? リッカ嬢」
マリアンヌの冷たい言葉にリッカはビクリと肩を震わせる。やはり身分差が大きな壁となるのか。