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新人魔女の雪の日のおやつ(7)

 オーブンの蓋を開けると、もわっとした湯気と共に甘い香りが溢れる。


「いい香りですね」

「本当に! 早く食べたいです!」


 リッカの言葉にエルナは大きく頷く。


 オーブンから取り出したパイをリッカが切り分けている間に、エルナは生クリームを泡立てる。生クリームをパイの上にたっぷりと乗せ、その上に先ほどの紅桃茸の果肉が入ったジャムをかけると完成だ。二人は顔を見合わせて目を輝かせた。


「さぁ! おやつにしましょう!」


 エルナの明るい声に、リッカは笑顔で頷いた。二人が席に着いたちょうどその時、工房主のリゼがおやつの匂いにつられて厨房へと顔を出した。


「エルナさん。 随分と良い匂いがしていますが、今日は何を……」


 そんなリゼにエルナは微笑んで言う。


「まぁ、ネージュ様! ちょうど良いところに。よろしければ、ご一緒しませんか? リッカ様に、素敵な物を頂いたのでパイを焼いてみたのです」


 エルナの言葉でリゼはリッカの席に視線を移す。


「雪の日に、何故君がここにいる?」


 リゼは訝しげに眉を顰める。


「ちょっと森へ採集に……」

「なんて無謀な事をしているのだ! 馬鹿か君は!」


 リッカの言葉にリゼは声を荒げる。リッカは気まずそうに視線を泳がせた。リゼの反応は至極当然である。仕事が休みになるという事は、外出は控えるべきという暗黙の了解に他ならない。厨房に重苦しい沈黙が流れる。そんな中、エルナは立ち上がりリゼに微笑みかけた。


「まぁまぁ、ネージュ様。そう仰らずに。せっかくですし、温かいうちに一緒におやつを頂きましょう」

「いや……しかしですね……彼女にはよく言って聞かせないと……」


 リゼは言葉を濁しながらエルナとリッカを交互に見やる。


「リッカ様が採取された紅桃茸を使ったパイなんですよ! 紅桃茸というのは、あんなにも美味しい物なのですね。私、感動してしまいました」


 エルナの言葉にリゼはピクリと反応すると、目を見開き、食い気味に問いただす。


「え、エルナさんはアレがお好きで? ……辛党だとは存じ上げず……わ、私は少々あの辛さは苦手でして……」


 そんなリゼの様子に、エルナは笑いをこらえながら口を開く。


「大丈夫です。これはもう全くの別物です! むしろネージュ様はお気に召されるのでは?」


 エルナの言葉にリゼはゴクリと唾を飲み込んだ。その反応を見て、エルナはさらに畳み掛ける。


「あの紅桃茸がここまで美味しくなるなんて……本当に驚きなのですよ。ね? 是非ご一緒に頂きましょう」

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