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新人魔女の雪の日のおやつ(1)

 新人魔女のリッカは、今日も今日とて素材採取に励んでいた。


「うーん……これくらいでいいかな?」


 リッカは鞄をポンポンと叩きながら満足そうに言った。今日の成果はかなりのものだと思う。なぜなら、希少な素材が採取できたからだ。


 昨夜、天気予報を確認したら、明け方に雪が降るかもしれないと言っていたので、珍しい素材が手に入るだろうと期待に胸を膨らませていた。


 リッカはニマニマとしながら採取したばかりの茸を鞄にしまう。その時、リッカの鼻先にポツンと冷たいものが落ちてきた。雪が止んでいるうちにと出かけてきたが、見上げた空はどんよりとした雲で覆われていて、また雪が降り出しそうだった。降り出したら厄介だ。


「また降ってきそう……急ごう」


 王都エル・ヴェルハーレ周辺は一年中温暖な気候で、雪が降ることなど滅多にない。一年のうちに一日か二日あるかどうかだ。そのため、リッカを含めた人々は雪には不慣れで、雪が降った日は仕事が休みになる程だった。


 そんな日にリッカが森へ来たのはもちろん素材のためである。今日リッカが採取したのは紅桃茸と氷精花だ。どちらも雪の日にしか採取できない希少な素材である。限定された気象条件でしか手に入らないため、レア素材とでも言おうか。ちなみに、先日手に入れた虹の雫は、伝説級なのでSレア素材である。


 紅桃茸は名前の通り鮮やかな紅色をしている。細くヒョロリとしたこの茸は、実は、年中生えているので、いつでも採取可能である。しかし、とても辛味が強く、虫や野生の動物も近寄らないほど。安易に採取をすれば、茸からとても刺激の強い胞子が撒き散らされ、涙が止まらないほど目と喉が痛くなる。素材としての使い道は、その刺激を利用した香辛料や辛味を活かした料理に使われる。


 だが、あまり知られていないことなのだが、紅桃茸は雪が降ると辛味が一気に抜け、甘くなるのだ。見た目も、ぷっくりと丸みを帯びて果実のような見た目になる。


「これがまた美味しいのよねぇ」


 動物たちもそれを知っているようで、雪が降った次の日には、ぷっくりと膨れた紅桃茸は動物たちに食べ尽くされて、あっという間になくなってしまう。


 そのため、甘い紅桃茸を手に入れるには、雪が降って間もない頃に森へ来なければならないのだ。しかし、雪の日に外に出る人はいないので、これが市場に出回ることは無いのである。


「うふふ……たくさん採れちゃった」


 リッカは鼻歌を歌いながら鞄を撫でた。

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