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新人魔女と不器用な師匠(8)

「ま、そういうことだ。こいつから聞いてなかったのか?」

「はい……、全く」


 リッカの答えに、ジャックスは呆れ半分、怒り半分といった様子でリゼを見る。


「おいリゼ。お前、嬢ちゃんに何も言ってないのか?」

「特に言う必要を感じなかったのでな」

「あのなぁ……、良好な人間関係を保つことも雇用主の大事な勤めだぞ」


 ジャックスはため息をつくと、リッカに向き合った。


「すまねぇな、嬢ちゃん。こいつは、その……不器用というか……人付き合いが下手というか……」

「いえ、わたしもリゼさんのことをよく知ろうとしなかったのが悪いと思うので」

「そう言ってくれて助かるぜ。じゃあ、改めて俺からこいつの紹介をしよう。こいつはリゼラルブ・ネージュ・マグノリアだ」

「リゼラルブ・ネージュ・マグノリア」


 リッカは噛みしめるように言った。それからふと首を傾げる。その名前には聞き覚えがあった。どこで聞いたのだろうかと考えるうち、リッカの顔がみるみる強張った。


「あ、あの……ネージュって……ネージュ・マグノリアって言いました?」


 恐る恐るリッカが尋ねると、リゼは静かにうなずいた。リッカは驚愕してワナワナと震えながら口を開く。


「あ、あなたが……あのマグノリア大賢者様なのですか!?」

「大賢者などと大層なものではない」


 リゼはさも面倒くさそうに答える。


「で、でも、ネージュって、大賢者様の称号ですよね?」


 困惑気味なリッカの言葉に、ジャックスは大きくうなずく。リゼはその言葉に、少しだけ顔をしかめた。


「私は私だというのに、肩書きが一体何だというのだ。くだらない」


 リゼは不満げだった。


「く、くだらないって……」


 まさか、これから師事しようとしている相手が伝説級の人物だったとは。緊張しないわけがない。リッカはゴクリと唾を飲み込む。


 そんなリッカの心中を知ってか知らずか、ジャックスが話を進める。


「まぁなんだ、こいつがネージュなのは事実だ。とはいえ、本人も嫌がるから、今まで通り気軽に呼んでやってくれ。その方がこの男も喜ぶ」

「は、はい。わかりました……え?」


 リッカはうなずきつつ、疑問の声を上げた。


「ん? どうかしたか?」

「えっと、今『この男』って……」


 リッカは戸惑いがちに聞き返した。


「ああ、こいつは男だぞ」


 ジャックスは事も無げに言った。


「えぇっ〜! こんなに美人さんなのに!!」


 リッカの失礼すぎるほどの驚きの声に、ジャックスがニヤリと笑い、リゼはフンと鼻を鳴らした。

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