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新人魔女と師匠の共同研究(6)

 瓶からスポイトを抜き取ったリッカの目はトロンと蕩けている。リッカは陶酔したような表情を浮かべて、まるで愛おしいものでも見るかのようにスポイトで吸い取った虹の雫の分泌物を見つめている。


 リッカの予想は当たっていたようだ。蕩け切った表情をみせる主人を、虹の雫に魅了されてしまったと判断した使い魔は、指示通り有無を言わさず主人に向かって飛びかかった。


 リッカは、その攻撃をモロに受ける。リッカの手から勢いよくスポイトが弾き飛ばされ、リッカは、飛びかかってきたフェンの勢いに押されるまま仰向けに倒れこんだ。


 上手く着地をしたフェンは、慌てて倒れているリッカのそばへ駆け寄ると、心配そうに顔を覗き込む。ペロペロとリッカの頬を舐めるフェンに、リッカはハッとして起き上がった。


 それから自分の頬を両手で叩く。パンといい音が辺りに響いた。フェンがビクッとしてリッカを見上げる。そんなフェンにリッカがニコリと笑いかけたことで、フェンはホッとしたような表情を浮かべた。リッカには攻撃する素振りはないようだと安堵したのだ。どうやら主人は正気に戻ったようだ。


「やっぱり、わたし……?」

「はい。魅了されかけていたようです」


 フェンはリッカを気遣うような表情を浮かべている。リッカはそんな使い魔に申し訳ないと謝った。


 それから、転がり落ちていたスポイトを拾おうと手を伸ばす。それを使い魔が慌てて制した。


「リッカ様。お待ちください。リッカ様はそれとの接触を避けた方が。また魅了されてしまう恐れがあります」


 フェンはそう言うと、リッカの鞄へ頭を突っ込み、すぐに空き瓶を咥えて顔を出した。


「僕は何故だか魅了されませんから」


 確かにフェンの言う通りだ。虹の雫を摂取したリッカを通して魔力酔いを起こしはしたが、フェン自身はこれまで虹の雫に接触しても、魅了されなかった。


 リッカは頷くと、スポイトの回収をフェンに託す。フェンは易々とスポイトを咥える。リッカがフェンの用意した瓶の蓋を開けると、そこにポトリとスポイトを落とし、虹の雫の分泌物の回収は呆気なく終わった。フェンは虹の雫としっかりと接触しているはずなのに、やはり魅了された様子はない。


「それにしても不思議ね。わたしは直接花に触れていなくても魅了されてしまうのに、どうしてフェンは平気なのかしら?」


 リッカは不思議そうに首を傾げる。フェンも不思議そうにキョトンと首を傾げた。


「さぁ? 何故なのでしょうか?」

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