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新人魔女と師匠の共同研究(1)

 新人魔女のリッカはポタリポタリと滴り落ちる雫をじっと見つめる。その水は、近くで見てもキラキラと光を放ち輝いているのが分かる。瓶の中の花も瓶越しに光を反射しているようだ。そうは言っても、相変わらず水中にその輪郭が薄らと見えるだけなのだが。


 リッカは瓶の上部に視線を移す。急拵えで作った水盤には、器の底に魔法陣を施し、常に一定量の水が湧き出るようにしてある。器に溜まった水は少しずつ溢れ出し、虹の雫の入った瓶へ注がれる。そして、虹の雫の蜜が溶け出した瓶の中の水は、瓶の下部に開けた小さな穴からポタリポタリと受け皿の中へ落ちていく。


 受け皿の中に溜まった水からは、滝壺の水のように甘い香りがほんのりと漂っていた。一晩では然程器には溜まらなかったが、それでもリッカは満足そうだ。


「良い香り」


 リッカは微笑むと、受け皿を新しいものに取り替え、虹の雫の蜜が溶け出した水が入った器にそっと口をつける。そしてほんの少しだけ口に含む。口の中に広がる仄かな甘みが心地よい。


「うん。美味しい」


 リッカは満足そうな表情を浮かべると、器を足下に置く。


「少ししかないけど、全部フェンが飲んでしまっていいよ」

「よろしいのですか? ありがとうございます」


 フェンは嬉しそうに皿に溜まっている水をペロペロと舐め始める。美味しそうに飲んでいる姿が可愛くて、リッカは思わず笑みを浮かべた。


 それからリッカは再び水の中に沈む花に目を凝らす。虹の雫はまるで水飴で出来ているかのように透き通っているのに、その名の通り、七色の輝きを薄らと放ち続けている。


 あの後、リゼから虹の雫について話を聞いた。虹の雫は生息地が特定されておらず、幸運に近い確率でしか採取できないため、その価値は非常に高い。市場で手に入れる事など、まず無理である。この程度のことは既に知っている事だった。


 しかし王都エル・ヴェルハーレ付近ではこれまで見かけたこともなかったというリゼの言葉には驚いた。あのリゼですら、虹の雫は数年前に一度、隣国の森で偶然発見したのが最初で最後だという。その時は、昨日のリッカのように花に魅了されてしまい、採取どころではなかったそうだ。


 リゼは虹の雫が放つ濃密な魔力が人を惹きつけるのだろうと考えているようだった。リッカもそれは感じていた事だ。


 水に溶け出した魔素を摂取する程度ならば、大きな問題にはならないだろう。だが、現物をそのまま体内へ取り込めばその影響を受ける。

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