表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/461

新人魔女と不思議な花(8)

 リッカとフェンは東の森の散策を終え、工房へ戻って来た。


「リゼさん、今お時間ありますか?」

「ない」


 執務机で本を読んでいたリゼに声をかけると、冷たい答えが返ってくる。机の上には本が山のように積み上がっている。そんな状況でもリッカは気にする様子も見せず、話を続けた。


「これを見てください」


 リッカはそう言うと、花が入った瓶をリゼの前に置いた。リゼはチラリとリッカを見るが、すぐに視線を本に戻す。しかし、目はしっかりと瓶を捕えているようで、本を読みながらもチラチラと瓶を見つめているのが分かった。これは、どうやら話を聞いてくれるようだと判断して、リッカは言葉を続けた。


「これ、虹の雫だと思うんですけど……」


 リゼはリッカの言葉に突然本をパタンと閉じた。そして、花の入った瓶をバッと手に取る。瓶の中にあるのは、滝壺の水だ。目を凝らせばその中にキラキラと光る物が入っていることが分かる。リゼはじっとその液体を見つめ、蓋を開けて少しだけ匂いを嗅ぐ。リゼの表情が先ほどよりも真剣なものに変わったのが分かった。


 その瞳に宿る鋭い光に、思わずリッカの背筋が伸びる。リゼはリッカを正面から見据えると、静かに口を開いた。


「これを何処で?」

「森の滝壺です」

「滝壺……あそこか」


 リゼは考え込むように腕を組んで黙り込む。そして、そのまま数十秒が過ぎた。リッカが不安そうにリゼを見つめていると、突然リゼが黒髪のポニーテールをバサリと下げた。


「これを私に譲ってくれ」

「え!?」


 リッカはリゼの言葉に思わず驚いてしまう。もちろんリゼに渡すつもりで花を二つ採取してきたのだが、予想もしなかった展開に戸惑ってしまったのだ。呆然とするリッカをリゼは不思議そうに見つめていたが、すぐに表情が曇る。


「まぁ、そんな虫のいい話もないか……そうだなぁ。私の手持ちの中で貴重な素材を幾つでもやろう。それらと交換という事では」

「あ、いえ! リゼさんにはお渡しするつもりでした! ただ……その……譲ってほしいなんて言われるとは思わなくて」


 リッカは慌ててリゼの言葉を遮る。そして、中身を師へ渡すため瓶の蓋を開けようとしてその手を止めた。


「あの、お渡しはします。ですが、条件があります」


 リッカの言葉にリゼは驚いた表情を見せた。


「なんだ、やはり他の素材と交換か?」


 リッカは必死に首を横に振って否定する。


「いえ! そうではありません。ただ、虹の雫について詳しく教えてほしいのです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ