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新人魔女と不思議な花(6)

 リッカの言葉にフェンは驚く。


「幸運をもたらすのに悪魔の植物なのですか?」


 フェンの問いかけに対して、リッカは困ったように首を横に振る。


「よく分からないのよ。存在自体が珍しいから。でも、昔からそう言われているの。それに……」

「それに?」

「実は、虹の雫は妖精が育てているらしいわ」


 リッカの言葉にフェンは驚いて目を見開く。


「妖精ですか?」

「そう。……でも、どうやらそれは違うかもしれないわね。あの花、わたしが食べちゃったけど、怒ってる妖精らしきものは周りにいないもの」


 リッカは自嘲気味に肩をすくめると、滝壺をジッと見つめる。


(妖精の花……ね)


 自分の意思に反して何かとてつもないモノに引き寄せられる感覚。それは妖精の仕業などではなく、まるで悪魔の所業のようではないか。リッカは思わず身震いした。


 自分を見つめるフェンの心配そうな瞳に気がついて、リッカはニコリと笑って見せる。そして滝壺に視線を戻すと表情を引き締めた。


(あの花をどう扱うべきか)


 このまま何もなかったことにして放置してもよいか悩むところだ。リッカはしばらく考え込んだ後、顔を上げた。


「水の中には、わたしが食べてしまった一輪だけが咲いていたの?」

「いえ。水に透けて良くは見えませんでしたが、多分もう少しあったかと」

「そう。それなら、あの花をもう数本採取しましょう」

「……ですが……」


 フェンは驚いた様子でリッカを見つめる。


「フェン、お願いできる?」

「もちろんです! ですが……」


 フェンは心配そうにリッカを見上げる。そんなフェンの頭をリッカは優しく撫でた。


「あの花は、ものすごく貴重な素材よ。手に入るこの機を逃す手はないわ。大丈夫。わたしは絶対にあの滝壺には近づかないから」


 リッカの言葉にフェンは、不安そうな視線を向ける。フェンの無言の訴えにリッカは困ったように眉を下げた。


「そんなに心配しなくても大丈夫よ。わたしは絶対ここにいるわ。ここなら滝壺からは距離があるでしょう?」


 リッカはフェンに説明しながら水のある場所との距離を確認する。水場とは充分に距離がある。それでも、心配そうに滝壺とリッカを交互に見比べるフェンに思わず苦笑いが漏れる。


「そんなに心配なら、わたしと木の幹を繋いでおく?」


 リッカが鞄からロープを取り出して見せると、フェンは仕方ないというようにため息をついた。


「分かりました。絶対に水には入らないでくださいね……くれぐれも気をつけてくださいよ」

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