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新人魔女と不思議な花(3)

 リッカは名残惜しそうに自分の手を見つめるが、花が消えると同時に蜜も消えてしまい、香りだけがほんのりと残っている。


「あの花は一体何だったのですか?」


 フェンが問いかけると、赤い顔をして目がトロンとし始めたリッカが、どこか夢現(ゆめうつつ)に答えた。


「もっと……」

「え?」


 リッカの言葉にフェンは不思議そうに首を傾げる。


「もっと欲しい」


 そう言うとリッカは滝壺へ向かってフラフラと歩いて行く。


「リッカ様? どうされたのですか?」


 フェンは慌ててリッカの後を追いかける。しかし、すでにリッカの意識はそこにはなかった。


 リッカは水の中に手を入れると、一心不乱に水を掻き花を取ろうとする。だが、見た目よりも水深のある滝壺の底に手は届かない。必死のリッカは、終いには頭を水の中に突っ込み水底の花に向かって手を伸ばす。


 主人の突然の奇行に、フェンは困惑してリッカを見つめていた。しかし、このままではリッカが溺れてしまう。フェンは慌ててリッカの服を咥えると滝壺から引き離した。


「わぁっ!」


 急に引っ張られたリッカは驚いて声を上げる。フェンにグイグイと引っ張られ、少しずつ離れていく水面に何かを求めるようにリッカは無心で手を伸ばした。その顔は、どこかぼんやりとしている。


「リッカ様! しっかりしてください!」


 滝壺から充分に距離をとった木の根元にリッカを座らせ、安全を確保したフェンは大きなため息をつく。途端に、体がぐらりと揺れてリッカに覆い被さるように倒れ込んだ。


「リッカ……様……」


 フェンの苦しそうな呼びかけにようやく我に返ったのか、リッカの瞳に光が戻ってきた。キョロキョロと周りを見渡して状況を確認している。


「あれ? わたし何をしていたんだっけ?」


 リッカの様子に「良かった……」と安堵の声を苦しそうに漏らしたフェンに気がつくと、リッカは慌てて体を優しく撫でてやる。


「どうしたの、フェン! どこか苦しいの?」


 夢現な表情から一変し、リッカが心配そうにフェンの顔を覗き込む。


「いいえ、僕は大丈夫です」


 弱々しい声で返事をするフェンに、リッカはオロオロとするばかり。


「でも、苦しそう」


 リッカの言葉にフェンは力なく笑うと、その場に伏せてしまう。そんな様子を見て心配になったリッカが何か薬草をと思い立ち上がると、フェンが慌てたように起き上がって引き止める。


「いけません! 今はここに居てください。また水の中に入られては……」


 フェンの言葉にリッカは不安な表情を見せる。

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