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新人魔女と不思議な花(2)

 リッカの足下をつかず離れずついて来ていたフェンも、興味深そうに滝壺を覗き込んでいる。その姿にリッカはクスリと笑みを零す。


「この水は魔素を含んでいるみたい。飲んでも平気よ」


 フェンはフンフンと水面の匂いを嗅いでから、滝壺の水をペロリと飲んだ。すると、嬉しそうにしっぽを振る仕草を見せる。どうやら気に入ったらしい。


「美味しい?」


 リッカの言葉に、フェンはご機嫌で吠えた。リッカはその様子に頬を緩めながら、小瓶に汲んだ水を魔法の鞄にしまう。


 その時だった。リッカの視界に小さな光が映り込んだ。それは滝壺の底にある何かから発せられているようだ。リッカは、不思議に思い水面に顔を近づける。


 透き通るほどに透明なのに、水の中に何があるのかよく見えない。


 リッカが不思議に思っていると、すっかり滝壺の水を堪能したフェンが、リッカを見た。


「リッカ様。どうされたのですか?」


 不思議そうに首を傾げるフェンに、リッカは水底を指差す。


「あそこに何かあるの。フェンは見える?」


 リッカの指す方へ必死に目を凝らしていたフェンが、不思議そうに首を傾げる。


「キラキラしたものがあるように思いますけど、なんだか形ははっきりしませんね。僕が潜って見てきましょうか」

「えっ?」


 リッカが驚くのをよそに、フェンは滝壺へ勢いよく飛び込んだ。水中のフェンの姿が一瞬で魚へと変化する。そして、そのまま水底へ向かって一直線に潜って行く。


 しばらくすると滝壺の底に着いたのか、その場でくるくる回りながら、口先で何かをツンツンと突く仕草を始めた。


 何をやっているのだろうとリッカが首を傾げて見ていると、やがて魚の姿をしたフェンが浮上してくるのが見えた。水中から勢い良く飛び出し、水飛沫を上げながら空へと飛び上がる。空中でくるっと回転すると、フェンは元の子狼の姿に戻って陸に着地した。


「水の中にあったのはこれでした」


 フェンは咥えていた物をリッカの足下に落とす。それはガラスのように透き通った花びらを持つ花だった。


 リッカはその花をそっと手に取ってみる。甘く優しい香りがふわりと漂う。その花をまじまじと見つめていると、花の内側からトロリと蜜が滲みだして来た。 リッカは思わずその花の蜜をペロリと舐めてみる。すると、花の蜜とは思えぬほどに甘く、舌が痺れるような感覚がした。


 あまりの美味しさにリッカは夢中でその花を舐める。気がつけば手の中にある花は、跡形もなく消えてなくなっていた。

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