新人魔女の完成魔道具(3)
それからリッカは、リゼの水晶が入った小袋を再び鞄から出すと、中から五大属性と二極属性の石をそれぞれ探し始めた。今度は先ほど使用した石よりも幾分大きめの粒を揃える。
これからエルナ用の魔道具の作成に取り掛かるのだ。自身が使用する魔道具を作っているうちにエルナの魔道具のデザインを思いついた。
エルナには、全属性の防御に徹した髪飾りを作るつもりだ。エルナを守りたいと言うリゼの意を汲んだ魔道具なので、大きな水晶を使うのにもそれほど抵抗はない。リゼのエルナへの愛の証だと思えば、袋の中で一番大きいものか、たくさんの石をふんだんに使うかしたいところだ。だが、あまりやりすぎると悪目立ちしてしまう。リッカは、エルナの髪飾りは上品な物にしたいと考えていた。
リッカは五大属性と二極属性の石を並べる。どれも煌めくような透明感があるのに属性の色は濃く、魔力を豊富に含んでいることが分かる。無闇に石を使わなくても、とても綺麗で繊細な細工ができそうだ。
リッカは、エルナの髪色に合わせて、台座はネイビーにしようと決めていた。形は、流星をイメージしたものにする。何気に自身の魔道具とも関連性を持たせたかったのだ。
リッカは、シュラムの木片を水桶に浸すと、鞄から月華草と星屑茸を取り出して、それぞれすり鉢ですり潰す。二つの粉末を混ぜ合わせ、水を加えて溶液を作る。そうしてできた溶液は、夜空のようなネイビー色をしていた。
月華草と星屑茸は不思議なことに、採取をした時間によって、粉末にした時の色が変わる。日中に採取した物は、粉末にすると夜空のような色になり、夜に採取した物は、暖かな日差しのような淡い黄色になる。こういう変わった素材は、色々と使い道がある上に、研究のしがいがあるので、リッカは好んで使っていた。
作った溶液に色が出たことを確認したリッカは、次に光苔の粉末を溶液にハラハラとまぶし入れる。丁寧に混ぜていると、溶液にラメが落ちたようにキラキラと光が煌めきだした。まるで夜空の星の煌めきの様だ。
想像した通りの溶液が完成すると、リッカは満足そうにふぅと一息つく。それから水に浸して柔らかくなったシュラムの木片の加工に入る。
星が流れているようなデザインで、シュラムを丁寧に削る。削り出した木片に、リッカは魔法陣を刻み込む。エルナに敵意を向けられた時のみ発動する防御魔法だ。髪飾りを付けていれば、七つの属性防御がエルナを守ることになる。