新人魔女の完成魔道具(2)
リッカは水晶の研磨を始める。リゼの水晶と自分が作った水晶とでは、違いが一目瞭然だった。
リッカは魔道具作りが好きで、魔力を込めた水晶も作り慣れていたのだが、リゼのそれとは全く別物のようだった。これまでは他人の作成した水晶と自身の水晶を比べたことなどなかった。市販の水晶はリッカにはとても粗雑に見えていたので、使用する気にはなれず、リッカは魔道具の類は自力で作成していた。
市販の物よりは良質な水晶を作っているつもりでいたが、リゼの水晶を目にして、自分の腕前はまだまだだと思い知った。もっと技術を磨きたいその一心で、リッカは無心で水晶に魔力を込めていく。丁寧に丁寧に水晶を磨いていると、少しずつだが確実に水晶の色が濃くなり、魔力が宿っていくのが分かった。
ゆっくりと時間をかけて研磨された水晶は、キラキラと美しい輝きを放つ。その出来映えにリッカは思わず頰を緩めた。まだまだリゼの水晶と遜色ないとは言えなかったが、それでもいつもよりも良い出来栄えだった。
リッカは次の工程に取り掛かるべく準備を始める。昨日用意しておいた水桶からシュラムの木片を取り出す。十分に水分を含ませたシュラムは柔らかくて簡単に加工できた。
フェンの補助具とお揃いにするため星型にくり抜いた小さな木片に、リッカは小さな魔法陣を描きつける。属性魔力付与の魔法陣だ。
それから洞窟の入口付近に生えていた光苔をすり鉢ですりつぶし粉末にすると、それをシュラムの木片に振りかけた。光苔には光を集める作用があるため、それを利用して木片の表面を反射させて、魔法陣を見えづらくする。今回は、魔道具を使っていると悟られる訳にはいかないのだ。つまりは、魔法陣の存在を誰にも気づかれてはいけない。
リッカは念入りに木片に光苔の粉末を塗り込む。木片がぼんやりと光りだすと、まるで本当の星のようだった。木片が発する光で魔法陣が見えづらくなったことを確認すると、いよいよ木片の表面に水晶を埋め込む。フェンの補助具のように五辺に五色の石を嵌め込み、二極属性の白と紫の石は中央に配した。
それを風魔法で一気に乾燥させると、研磨して滑らかな表面に仕上げる。チョーカーとするため、フェンとお揃いの赤いリボンをつけて完成だ。
出来上がった魔道具を手に、リッカは達成感からほぅと大きく息を吐いた。あとはこれをリゼの前で起動させるだけ。リッカは出来上がったばかりの魔道具を大切に鞄にしまった。