新人魔女の魔力暴発計画(8)
光と闇属性の素材についてはリゼに相談しようとリッカが考えたころ、フェンが水晶を咥えて戻ってきた。どうやら、水晶内の魔力を使い切る前にゴーレムを倒せなかったようだ。リッカは労うようにフェンの頭を撫でる。
「特訓はどうだった?」
「魔法を出すコツは掴めましたが、まだまだです」
悔しそうに告げるフェンの表情に、リッカは頼もしさを感じた。まだまだ成長出来るという自信が見てとれる。リッカはくすりと笑った。
「そろそろ戻りましょうか。また明日もここで特訓をしましょう。わたしも作業の続きがしたいから」
リッカの言葉にフェンが頷く。リッカは、水桶に入れたままのシュラムの木片をチラリと見てから、洞窟の出口へ足を向けた。
リッカとフェンが工房へ戻ると、リゼは朝と変わらず執務机で本と向き合っていた。リゼは、リッカが帰ってきたことに気づいていながらも、視線は本から外さない。リッカは迷いなく執務机へ直進していく。
「リゼさん、少しご相談が……」
リッカは真剣な面持ちで、魔道具作成について報告する。
「なるほど。つまり君は、魔道具を媒体にして属性魔力付与を自分にかけるということか」
リゼは読んでいた本から視線を上げると、リッカがうまく言語化できなかった現象を、いとも簡単にまとめ上げてしまった。リゼの言葉に、リッカは内心でなるほどと思いつつ、こくりと頷く。
リゼは少しの間考えると、引き出しから何かを取り出した。
「属性魔力が大量に必要なら、これを使うといい」
リゼが引き出しから出したのは、小袋だった。中には属性魔力をを含んだ色とりどりの水晶が入っており、闇属性魔力を含んだ紫水晶や光属性の白水晶なども入っている。その量はかなり多いように見えた。リッカが袋の中身に驚いていると、リゼは何でもないことのように淡々と言う。
「光属性や闇属性の素材は、希少種にあたる素材だ。野生で見つかることは稀だし、滅多に市場に出ることもない。万一、市場に出ていたとしても、超がつく高値がついているか、紛い物だろう」
リゼの説明に、リッカは小袋の中を見つめたままゴクリと唾を呑む。貴重な物をいとも簡単に手渡され、思わずフリーズしてしまう。
「どちらの属性の素材も持っていないと言う相談なのだろう?」
「それはそうですけど……でも……」
「問題ない。まだ他にたくさん所持しているのだから」
そう事も無げに言ってみせるリゼに、リッカは改めて大賢者の凄さを垣間見たのだった。