新人魔女の魔力暴発計画(2)
「理論上は可能だと思って作ってみたのですが、わたし自身が納得していない以上使おうとは思いません。ただ、わたしの理論が正しかったのかをリゼさんに見ていただきたかったのです」
リッカの答えに、リゼは軽く頷く。
「ほぉ? それでは、私が頼んだ魔力暴発の魔道具はどうするつもりなのだ?」
リゼの言葉に、リッカはぐっと拳を握り込む。
「魔力暴発でなければいけないのでしょうか?」
リッカの言葉に、リゼは怪訝そうな顔をする。リッカは、魔力暴発を引き起こすことなくリゼとの婚姻解消に持ち込めないかと考えたのだ。
「何も魔力暴発を引き起こさなくても、マリアンヌ様にわたしの魔力が多いと思わせられれば良いと思うのです」
「ふむ。そんな方法があるのか?」
リッカに出来ることは限られている。ならば、やれることをやるしかないとリッカは思っていた。
「魔装を使うのはどうでしょう?」
「魔装? 君はつい最近まで魔装を知らなかったのに、使えるようになったのか?」
リゼの驚きはもっともだった。リゼの言う通り、リッカはリゼと出会うまで魔装の存在を知らなかった。だが、やはり女の子。興味はある。リッカは緩く首を振り、慎重に言葉を選びながら答えた。
「今はまだ使えません。そもそも、魔装は多くの人に馴染みがありません。それは、魔装が魔力を多く必要とするからです。リゼさんの髪色が変わるのは体質だと言う事は分かっています。しかしもし、魔装でリゼさんのように何色にも髪色を変えることが出来れば……。そういった魔装に馴染みがない方々には、わたしが魔力暴発を起こしているように見えるのではないでしょうか」
リゼはふむと顎に手を当てる。考え込むリゼを前に、リッカはさらに言葉を重ねる。
「この方法ならば周囲に危険を及ぼす事はないので安心かと思います。ですが、そうは言っても、わたしは魔装の方法を知らないので、リゼさんのお力をお借りできないものかと……」
これは賭けのようなものだった。リッカはドキドキしながらリゼの返事を待つ。すると、リゼがふっと笑う気配がした。リゼの金の瞳が興味深そうに輝く。
リッカは少しほっとした。リゼの見せた反応から、自分の思い付きがそれほど的外れではないと分かり、嬉しくなった。
「私の力を借りたいと言うが、具体的には?」
リゼの問いかけに、リッカは大きく息を吸うと、はっきりと宣言した。
「以前お借りした、リゼさんの魔術書をお借りしたいのです」
「魔術書?」