新人魔女とわがまま師匠(6)
リッカはリゼの強引な持論に、ぐっと喉を詰まらせた。確かにリゼの言う通りだ。リッカが口を噤んで俯くと、勝ち誇ったようなリゼの声が響いた。
「まぁ、君を揶揄うのはこれくらいにしておくとして……君の危惧している、どうやって姉上を説き伏せ、エルナさんと婚姻を結ぶのかについてだが……」
リゼはそう言うと、リッカの不安を取り除くようにニコリと笑った。その爽やかすぎる笑顔に、リッカには何故か言いようのない悪寒が走る。リゼは至極爽やかな笑顔を浮かべたまま言い放った。
「君に一芝居打ってもらいたい」
「………………………………はい?」
一拍置いて呆然とした声を出したリッカは、リゼの言っている意味が分からず目を白黒させる。しかしリゼはお構いなしに続けた。
「君にはしばらくの間、私の婚約者を演じてもらいたい」
リッカは今度こそ二の句が継げなくなった。口をパクパクさせているリッカを他所に、リゼは今後のシナリオを明かす。
「と言っても、君の将来に傷を付けることになってはいけないので、対外的には公表はしない。この件は極秘で進める。姉上の周辺にのみ、私は宰相家の娘と婚姻をするのだと思わせれば良いのだ」
リッカは唖然とした顔のままリゼを見つめ続けた。そんなリッカを見つめ返しながら、リゼは更に話を続ける。
「君には、婚約者として一度姉上に謁見してもらうことになる。その際に君の魔力を暴発させてほしいのだ」
「ま、魔力暴発ですか? 国王陛下の前で?」
リッカは困惑の表情を浮かべる。リゼが何故そんなことをさせるのか、やはり理解できない。そんなリッカにリゼは説明を始めた。
「そうだ。膨大な魔力持ち同士では、互いの魔力が影響しすぎてしまうため、肌を合わせる相手としては相応しくないのだ」
「は、肌を合わせる?」
リッカは目を瞬く。リッカが怪訝そうな表情を浮かべるのを見て、リゼは失言してしまったことに気がついた。
「い、いや、その……なんだ……えーと、まぁ、その……規格外の魔力量を持つもの同士の間に生まれた子はどれほどの力を持つか、想像もつかない。もしも、私のように制御の効かない魔力持ちになってしまったら……」
リゼは、リッカの視線を逃れるように顔を逸らす。そして、一つ咳払いをするとさらに説明を続けた。
「つまり、王族では、あまりにも強すぎる魔力持ちは受け入れられない。だから、君が国王陛下の前で魔力暴発を起こせば、私と君の婚姻は、即解消されるはずだ」




