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新人魔女とわがまま師匠(2)

 エルナの言葉にリッカはじんと胸が熱くなるのを感じたが、しかし、だからといって簡単には納得できない。


 エルナにとって宰相の養女になる事が本当に良い話なのだろうか。養女になるということは、これまでの家名を捨てるということだ。名前を変える。それはつまり、これまでのエルナ・オルソイの人生を捨てることのようにリッカには感じられた。そうであるならば、エルナの方がよほど自分を犠牲にしている。それなのに、どうして容易くそのことを受け入れているのかが分からない。リッカはもう一度エルナに食い下がった。


「エルナさんは、オルソイ家の名を無くしてしまってもよいのですか?」


 リッカの言葉に、エルナは少し困った表情を浮かべ、頬に手を当てた。そして少し考えた後、口を開く。


「宰相家のような名家ですと、お家の名を繋いでいくことも立派な使命かと思います。ですが、我がオルソイ家は既に爵位も御座いませんし、オルソイの名自体は遠縁が継いでおります。私がオルソイの名に固執する理由はないのです。それに……」


 エルナは何か言いたげにリゼに視線を送ると、薄らと頬を赤らめた。


「それに、どのみち輿入れをすれば新たな家の姓を名乗ることになるのです。私にとって名を変えることなど、どうということはございません。オルソイであろうと、宰相家の養女であろうと、エルナ・マグノリアになろうと、結局、私は私ですから」


 頬を染め、しかしはっきりとそう言い切ったエルナの言葉に、途端にリゼは激しく咳き込み、耳まで赤く染め上げた。リゼの激しい咳込み具合にエルナは慌ててリゼの背中を摩りに駆け寄る。その間もリゼは、口先で「エルナ・マグノリア」と呟いては、さらに耳を染め、ごほごほと咳き込んでいる。背中を優しく摩るエルナには必死に大丈夫だからと告げてはいるが、顔は相変わらず真っ赤なままだった。


 リッカはそんな二人の様子を暫く呆気に取られて眺めていたが、不意に事態を察して顔をぼっと真っ赤に染め上げた。


 リゼの気持ちも、エルナの気持ちも知った上で、リッカはリゼとの婚姻を決断したつもりでいた。しかし、改めて寄り添う二人の姿を目にしたリッカは、自分の決断がどれほど独りよがりで、二人にとって傍迷惑な行為か思い知らされた。


(もしかしなくても、私ってばお邪魔虫?)


 リッカは、自分がものすごく子供に思えた。自分の決断が正しいと思い込み、自己犠牲に酔いしれ、全く周りが見えていなかった。

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