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新人魔女とたいへんな密約(4)

 リッカに手を握られた母は驚きに目を見開きながら顔を上げた。そんな母の顔を正面から見つめて、リッカはにっこりと微笑む。そして、コッソリと囁いた。


「お母様。安心してくださいませ。リゼさんは決して怖い人ではありませんから」


 ゆっくりと深呼吸をした母は、気持ちを落ち着けるためか胸に手を当て小さく頷くと、再び背筋を伸ばした。その目はしっかりとリゼを見据えている。


(さすがお母様)


 普段通りに振る舞う母を見て、リッカは満足そうに頷いた。その様子を見ていた父は、ゆっくりと口を開く。


「それではリゼラルブ様。本題に入らせて頂きましょう。この度は我が娘リッカより貴方様が我が娘との婚姻を望んでおられるとお伺いしました」


 父の言葉に、母はもちろんリッカもリゼへ目を向けた。三人は射抜くような鋭い視線をリゼに向ける。


 当のリゼは顔色一つ変えず優雅に紅茶を飲んでいる。優雅な場面に見えるのに、その実、まるで全身を針で突き刺されるかの様な緊張感が室内に漂う。三人の視線に晒されながら、リゼは流れる様な動作でカップをソーサーに戻した。


「ええ。その通りです」


 リゼは堂々と答えた。その返答に、両親は動揺を隠せないようだ。特に母が顔を強張らせているのが分かる。そんな周囲の反応など気にも止めず、リゼは普段通り落ち着いた様子で続けた。


「新国王陛下が、私と宰相家の娘との婚姻を望んでおられるのです。宰相にも既にお伝えしていると聞いておりますが」


 リゼの口から国王陛下という言葉を聞いた瞬間、両親の体が少し強張るのを感じた。父は明らかに動揺を隠せずにいるし、母に至っては顔面蒼白だ。


 リッカの両親は動揺した様子で互いに顔を見合わせている。やはり、リッカの父はこの婚姻について知っていたようだ。何も聞かされていなかったらしい母が驚いたように目で訴えているのが分かる。二人の間で視線だけが何度か行き来したのち、父は諦めたように頷いた。


「仰せの通り、マリアンヌ様より打診は頂いておりました。しかし、まずは貴方様のお考えを知ることが肝心と思い、妻には陛下からの打診については、何も伝えておりませんでした」


 宰相はリゼを見据えながらそう告げた。父の言葉に、リッカは驚いて目を丸くしながら隣の母を見る。母は顔を強張らせたまま小さく首を縦に振った。


 リゼはじっと母の反応を窺っていたが、やがて静かに口を開いた。


「そうですか。では、夫人は今回の婚姻をどう思われますか?」

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