12章 製造ルート 6話
レイジックは笑みを浮かばせながら頷く。
「巻き込んじゃってごめんねライト君。実際の所、戦力がどうしても欲しいから、異能の力を持つライト君に頼る事になって」
ミリイが申し訳なさそうに、そう言ってくる。
「構いません。少しでも皆さんの役に立ちたかったですし」
「うん。ありがとう」
ライトの温かい声にミリイは勇気付けられおっとりとした笑みになる。
「これで何の成果も上げられなかったら、ライト君に向ける顔がないよな」
「そうだな。絶対に証拠を炙り出してやる」
ラーシュが涼し気にそう言うと、レイジックのやる気は更に上がった。
「ちょっと待て。異能の力なら私だってあるのに、何でタマゴが優先される。私は多種多彩で応用出来る独尊の男だぞ」
そこで、ヒーロー教官が仏頂面で割って入ってきた。
「今回は水面下でやるっていたじゃないですか。ヒーロー教官は奇矯な、いや、熱血のある一面があるから、ここの工場で武器が製造されていると知るや否や、騒動を起こすんじゃないかと言う懸念がありますから、おやっさんとここで待機しててください。いざって時には頼りにさせてもらいますから」
危うく本音を言いそうになったレイジックは訂正して、真摯にヒーロー教官に胸の内を伝える。
「まあ、私のように破邪の剣を手にしている勇敢な男には致し方ない事だな。ならここはお前達に任せる」
ヒーロー教官は自信満々にそう言うと、ライトに「気張れよタマゴ」と喝を入れる。
「はい!」
ライトは真剣な表情でヒーロー教官に向け頷く。
「よし、行くぞ」
変装し終えると、レイジックが先導し、白いバンを出ていき、他の皆も後続していく。
陽炎の道路を歩きながら、衣服製造業の前に着いた一行。
一目で不審者と思われる服装だが、侵入するには仕方ない。
ライトはいつも以上に周囲の目が気になるが、何とか冷静を保ち、不審な動きはしないよう心掛けた。
工場の正面のシャッターの前で煙草を吸いながら、周囲を監視している厳つい男が二人いた。
作業服を着ているが、何だか堅気に見えない印象がある。
そもそも、ただの衣服製造業に二人の見張りなど居るのだろうか?
ライトは疑問を持ちながらもレイジック達の後ろを付いて行く。
「来たか」
見張りの男がレイジック達が着くなり、何故か覆面を被っている来訪者を知っていると言う認識の言葉を口にする。
レイジックはその言葉だけで、警戒心を高めた。
「お前ら、誰の使いだ?」
見張りの厳つい男は鋭い目付きでレイジックにそう聞いていた。
「シャルナ・ヴァースキーさんの使いです。点検のために来ました」
なんと、レイジックはしれっとシャルナの名を口にした。
ラーシュ達も特に動揺せず佇んでいる。
どうやら事前に打ち合わせをしていたようだ。
すると、厳つい男は「入れ」と言って先導する。
ライト達も後に続く。
中は至って普通の作業所。
衣服を折り畳み袋に詰めるなどしていた光景が広がっている。
しかし、どの従業員もあまり堅気に見えない感じがした。
黙々と作業をこなしているが、楽しくやっている感じがまるで見受けられない。
全員が仏頂面だった。
「こっちだ」
厳つい男はそう言って、ベルトコンベエアの機械に取り付けられているレバーを下げる。




