12章 製造ルート 5話
すぐさま全員がパソコンのモニターに映っているトラックのタイヤの凹み具合が詳細されたデータを食い入るように見る。
「……六,七センチ凹んでいるな」
タルヴォが鋭い目をパソコンの液晶に向ける。
「とにかく捜査する価値はありそうだな。すぐに出るぞ」
レイジックも気合十分といった感じだった。
「あの車を追うんですか?」
「いや、直接工場の中に入る。追って奴らの拠点を掴むより、まずは武器が製造されていたどうか掴むのが先決だからな」
ライトの質問に、タルヴォは淡々と答える。
「よしっ、いっちょ私が潜り込んで、社員を片っ端から更生ルームに送って問いただしてやるとするか」
ヒーロー教官の珍しいやる気の意気込み。
「いえ、今回は警察署や政府に知られる訳にはいかないので、水面下に事を進めようと思っています。内通者が居るとなると、恐らく上層部が絡んでいるとも思われますので、万が一この事が露呈されたら私達全員が追放されるだけじゃすみません。下手をしたら……殺される可能性もあります」
少し暗い面持ちでそう言うミリイ。
「ライト。下りるなら今だぞ。お前が怪傑人を捕まえたいと言う胆力があるのは知っていた。だからこそここでもう一度見定めろ。お前はどうしたい?」
レイジック達はライトの心境や民辺に付いて、キャンディー所長から聞いていた。
だからこそ、その気持ちを買い、光を照らす(ライトイルミネイト)のメンバー達はライトをここまで誘導し、選択肢を与えた。
すると、ライトは。
「引きません。僕も怪傑人の足取りが少しでも掴めるなら、全力で接戦します」
揺るぎない決意の言葉。
その言葉を聞いた全員は誇らしげに笑う。
「なら全員で行くとするか」
ラーシュが意気込んでそう言うと、全員は意気投合し首肯する。
「実際今から全員で行くわけじゃないけど、とにかく手筈通りにね」
「ああ。まずは俺とミリイ、ラーシュにライト。この四人で工場の中に入る。こいつを着てな」
ミリイが訂正し、全員に確認を取ると、レイジックが指揮を取り、四人分の若者向けの服を鞄の中から取り出す。
「これを着て行くんですか?」
「ああ。それとこいつも被ってな」
ライトの質問にレイジックは更に鞄の中から覆面を取り出した。
「なるほど、怪傑人に変装するんですね。でも、もしあの工場の中で武器が製造されていなかったら不審者として騒ぎになるんじゃ」
ライトは不安な面落ちで口にする。
「その辺は大丈夫だ。怪しまれたら、季節外れのハロウィンです。とでも言っておけば誤魔化せる。幸いな事に、怪傑人が現れてから、各所で覆面をして悪戯する奴らが頻繁に増えてきたからな。そのお陰でこうしたカモフラージュが出来るって訳だ」
タルヴォの補足に安堵したライト。
「それと武装はして行けよ。奴らの武器庫ともなると、万が一戦闘になれば迷わずその武器で発砲なりしてくるはずだ。ライトは素手でいいのか? 駄目だったら置いてくぜ」
レイジックは武装しながらライトにそう問いかける。
「このまま行けます」
ライトは拳を強く握り準備万端といった所だった。




