12章 製造ルート 1話
次の日。
ライトとヒーロー教官はいつも通りスウェーズ地区の巡回をしていた。
だが、ヒーロー教官の様子がいつもと違い、真剣な面持ちだった。
「今日は随分と気合が入っていますね。何かあったんですか?」
ライトは素朴な疑問として聞いてみる事に。
すると、ヒーロー教官が周囲を気にし始める。
「……子供のお前にはまだ早いかもしれないが、特別に社会見学の一端として教えてやる」
神妙な面持ちでヒーロー教官はそう言うと、懐からスマートフォンを取り出した。
「これを見ろ」
ヒーロー教官はとあるサイトをライトに見せる。
「ん? ……今なら好きな子と海外ツアーでいちゃつき放題。そのまま結婚が出来るお墨付き……どう言う事です?」
ライトが目にしたサイトは、出会い系サイト? だった。
だがその出会い系サイトが余りにも胡散臭い感じがする。
なぜなら、サイトの至る所にエロ画像が貼られていて、明らかにセンシティブなサイトだと伺える。
「なんだ。これ見ても分からんのか? これはな、王手のサクラオウカと言う会社が運営しているサイトだ。そしてこのサクラオウカでは年に三回、抽選で、好きな女の子の従業員とお近づきになれるだけでなく、一緒にその子と海外旅行に行けるうえ、そのまま結婚できると言うイベントだ」
ニマニマしながら喜びを隠し切れないような態度で喋るヒーロー教官。
ライトは口を真一文字にし、どう答えればいいのか悩んでいた。
反応に困る。
ましてや十七歳にそんな事言ってどうするのやら。
どうせなら隠し通して欲しかったライト。
「あのう。ヒーロー。これ……あっち系のサイトじゃないですか? 信用できるんですか? 明らかに胡散臭いですよ」
ライトは、はぅきりとアダルトサイト、と口にするのが恥ずかしく、躊躇した結果、仄めかす言い方で恥ずかしながら伝える。
「そんな事で赤面してどうする。いいか、さっきも言ったがこれは王手の会社だ。それに実績もある。これに応募して当たれば、晴れて私も幸せの絶頂を迎えるのだ。ムフフフッ」
呆れながら説明してきたヒーロー教官は最後には下卑た笑みになる。
ライトは全面的にそのサイトを信用できなかった。
改めてそのサイトをよく見て見るライト。
すると。
「あのう、ヒーロー。よく見て見ると、年収一千万以上の方限定と書いてますよ」
「――なに⁉」
ライトは神妙な面持ちでそう言うと、ヒーロー教官は目を大きく開き仰天する。
「……ば、馬鹿な」
ヒーロー教官は地面に両手をつけ、消沈していた。
打萎れるヒーロー教官にかけて上げる言葉が見つからず、ライトは肩を優しく叩いてあげる事しか出来なかった。
そして、ライト達はとある衣服製造業を歩いていた。
五百坪はある新築に近い外装の工場。
ヒーロー教官がそのルートを歩いて行く、と言っていたため、何故か目的地となっていた。
着くなりヒーロー教官は周囲を確認する。
すると、特殊車並みの白いバンが止まっていて、そこからなんとタルヴォが手招きをしてきた。
ライトもそれに気付き、ヒーロー教官と一緒に急いで白いバンに走っていく。
「おお着いたな。入れ」
タルヴォがドアを開けると、ヒーロー教官が躊躇いなく入ると、ライトも「どうも」と言ってよそよそしく入る。




