11章 試み 1話
一夜明け、シャルナとブランは廃墟の工場の二階の部屋でアフタヌーンティーをしてくつろいでいた
廃墟の工場のはずなのに、そこだけがサンルームで出来ていて、街を一望出来る。
チューリップ、アベリア、コスモスなどの植物がガーデニングのような空間で栽培されていて、そのサンルームは自然の匂いで充満していた。
微かに香るロイヤルミルクティーにクッキーを浸し頬張るシャルナとブラン。
「このまま計画通りに事が進めば、あの人がこの国の少子化にピリオドを打つんですよね?」
ブランは、雑談がてら疑問に思った事を口にする。
「そうだね。だがこのまま終わっては退屈だ。やはり娯楽には時折刺激がないとね」
シャルナは外を眺めながら、優雅に語る。
「刺激と言うと、やはり光を照らす(ライトイルミネイト)絡みですか?」
「いや、全てだよ。僕の異能を覆す常軌を逸した存在だ」
ブランは首を傾げると、シャルナは微笑する。
シャルナは異能の持ち主だった。
その異能とは一体。
「シャルナさんの異能は便利ですよね。あれ反則ですよ。だから今まで警察は私達の尻尾すら掴めなかった」
ブランはロイヤルミルクティーを啜りながら涼しげに語る。
「まあ邪な人間に取っては渇望する程欲しがるだろうね。と言ってもありきたりな異能だけど」
少し呆れるシャルナ。
「私から見れば人間味があって良いと思いますがね。ハッキリと化け物と呼ばれる程の異能と言う訳じゃないんですし」
「……人間味か」
ブランは気さくに話すが、シャルナはどこか悲し気な瞳で空を見る。
「失言でしたかね?」
「いや、気にしないでくれ。僕は人間だろうと怪異だろうと構わない。僕は僕さ」
ブランは気に障る事を言ってしまったか? と考えながら聞くが、一変して凛々しい表情になるシャルナ。
「そこで肯定なされるとは。で、どうします? 今後も怪傑人として活動していきますか?」
素朴な疑問のように聞いてくるブラン。
「……そうだねえ」
シャルナはどこか寂しそうな表情をする。
「何か思い悩む事でも?」
「たまに思うんだ。僕達は一体何に試されてるんだろうとね」
首を傾げるブランにシャルナは遠い目で語る。
まるで何かに胡乱しているような。
「その点で例を挙げるなら、神に試されていると言った方が無難な気はしますが、シャルナさんはそうじゃないんですか?」
ブランはロイヤルミルクティーを啜りながら端的に答える。
「一般的にはそうだし、僕もそう思うよ。ただ、それは平等じゃない。僕達人間を侮辱している。何故なら神が一方的に創造した事によって僕達は派生された存在と言ってもいい。それは千差万別を生み隔意されるものだ。それが人間だ。その人間が神に試されていると言うなら、また神も、僕達人間に試されるべきなんだ。善悪の実を実らせた償いも含めてね。この一連の事件の果てに、神はどのような判決を下し、人間を観見するか。神も人の子、と思い知らされるかもしれない」
シャルナは頬に笑みを浮かべながら言い切る。
「ハハハッ。シャルナさんの論理や見解は卓越していますね。まさか神を試そうだなんて、そんな事考えるのはシャルナさんぐらいですよ」
ブランはツボにはまったかのように笑うと、シャルナを称賛する。
「変かな?」
「いえ、素晴らしいと思います。そう言う観点だからこそ、私達は貴方に追随していくのですから。これからもよろしくお願いしますよ。シャルナさん」
シャルナは涼し気に首を傾げると、ブランは称えるかのようにしてシャルナに従属する二アンスを含んだ言葉を口にする。




