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10章 過去の呪縛 3話

 すると、レイジックが鋭い眼差しでタルヴォを睨みつける。


 タルヴォは目を閉じ、(ちん)()(もっ)(こう)しているような様子だった。


 そして、ゆっくりと目を空け、マイクを手に取る。


 「……確かに十年前、私は、後に殺人犯と指名手配された子供を目撃しました。その目撃した瞬間、その子が殺人犯だと言う確信もありました。当時は相手が子供だったため、発砲は控え、(おん)(びん)に済ませようとしましたが、結果から見れば黙認したのと同然です。当時から子供政策の主張を行っていた政府の命令に背く事も出来ず、判断がつかず、残念な結果となってしまいました」


 タルヴォは真面目な面持ちで淀みなく語る。


 記者会見に居る全員が黙って耳を傾け、フラッシュの音だけが鳴る。


 タルヴォは引き続き喋る。


 「しかし、商店街での銃撃犯である子供を射殺した後、(かい)(こん)する訳でもなければ(じく)()したつもりもありません。仲間が手を(よご)していると言うのに、自分だけが(よご)さない訳にはいかない。例え()(せん)された手になっても、私は(かい)(けつ)(じん)の真相を掴み、解決したいと強く自分を()()する所存です」


 説明を終えると、リエイは軽く頷き「健闘を祈ります」とだけ答える。


 タルヴォはリエイに一礼する。


 一同も納得したのか、コクコクト頷き、タルヴォに向けカメラを撮る。


 だが、そんな(かん)(めい)を受けるような言葉を()(さい)させるような音が鳴る。


 ――ドン!


 なんと、レイジックがテーブルを強く叩いたのだ。


 その行動に一同、驚愕する。


 「……れ、レイジックさん?」


 隣に居たミリイが動揺しながら、宥めようとしたその時、レイジックがマイクを強く握る。


 「そういやあさっき言いそびれた事があった。俺は相手が大人だろうと子供だろうと容赦しない。この世の悪を根絶やしにするまで」


 その怒気のこもった声で言うと、マイクを放り投げ、会場を去ったレイジック。


 「おい! レイジック!」


 タルヴォは去って行くレイジックの後を逼迫した表情で追う。


 ラーシュとミリイもただ事ではない、と思い後続する。


 どよめく会場の裏でズカズカとした足取りのレイジックをタルヴォは捕まえ、胸倉を掴み壁に叩き付けるように押し付ける。


 「お前どういうつもりだ! 報道されているってのに、あんな過激な事を言って⁉ 光を照らす(ライトイルミネイト)の存続だけでなく、警察と言う組織事態が疑念を抱かれるんだぞ! お前それを分かっているのか⁉」


 タルヴォは激怒した様子でレイジックを睨みつける。


 しかし、レイジックは侘び入れる気持ちも怯む様子もなく、炯眼の眼差しをタルヴォに向けていた。


 「忘れたとは言わせないぜ。あんたが十年前、あの犯人を止めてりゃ、母さんは死なずに済んだ。おまけに商店街での銃撃事件であのガキ達を(あや)めた事を一番後悔しているのはあんただろ? なのによくもぬけぬけとあんな戯言(たわごと)()えたもんだな」


 レイジックもまた(いきどお)りをタルヴォに感じていた。


 その言葉にタルヴォは面を食らうようにして、思わずレイジックの胸倉から脱力したみたいにして手を離す。


 タルヴォの目は徐々に憂いを帯びていった。

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