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9章 闇の綻び 4話

 ライトは見ていられず、大きなため息を吐き両目を塞ぎ俯いていた。


 他のメンバーも呆れて言葉が出てこなかった。


 「分かってくれたなら良いんだ。……愛しているよ。マミイ」


 笑みを浮かばせながらヒーロー教官の謝罪を受け入れたマザコンの男は、(こう)(こつ)な表情で、画像を見つめるとスマートフォンに(せっ)(ぷん)した。


 完全に、マミイとやらに心酔している無名のマザコンの男。


 「いい加減にしやがれ! おちょくりやがって! やっちまえ!」


 一人の厳つい男が(おん)()を取って先行すると、他のメンバーもライトとヒーロー教官に向かって走ってくる。


 マザコンの男は、スマートフォンに映っているマミイとやらにご熱心の様子で、(こう)(こつ)な笑みを浮かばせながら後退る。


 ライトに殴り掛かってくる男。


 ライトは容易く避ける。


 ヒーロー教官も同じように容易に(かわ)す。


 四方八方の攻撃を(かわ)したり、手で往なしたりなどして、一向に野蛮な男達の攻撃は、掠りもしなかった。


 「ちくしょう! こいつらどうなってんだ⁉」


 最初に特攻してきた厳つい男は肩から息を切らしながら動揺していた。


 「お前らは赤子からやり直した方がいい。母ちゃんの乳を吸う所から始めるんだな。(しょ)()(かん)(てつ)は大事だぞ」


 ヒーロー教官はニヤニヤしながら涼しげに語る。


 「舐めやがって!」


 すると、一人の男が何と、ナイフを取り出した。


 ()(たい)八センチはある。


 十分、銃刀法違反に該当するものだった。


 それを平気で取り出してきた。


 「アホなガキんちょ共だ。仕方ない。……更生してやる」


 ヒーロー教官は呆れた様子から、鋭い目付きに切り替わると、そのナイフを手にしている男に向かい指を鳴らす。


 すると、その男の空間だけがグニャリと歪み、その歪みの中に驚く暇もなく飲み込まれた男。


 その現象をまじかで目にした残りのメンバー達は驚愕した。


 「な、なんだよそりゃー!」


 一人の人相の悪い男は尻餅を着きながら(せん)々(せん)(きょう)々(きょう)としていた。


 「お前らも更生しといてやる。後でたっぷりドクゼリ、いやいや、(よもぎ)を食わしてやるからな」


 ヒーロー教官は意気揚々としながらそう言うと、残りの(マザコンの男)は除いたメンバーを更生ルームに送っていく。


 かなりの騒ぎになったはずなのだが、マザコン男は未だスマートフォンに映っているマミイにゾッコン中だった。


 「お疲れ様です。ヒーロー」


 ライトはひと段落した、と判断し、ヒーロー教官に労いの言葉を掛ける。


 「まあ私に掛かれば脱毛処理をする前の毛並みチェックをするよりも簡単事だ」


 独特な? 表現で場を濁すヒーロー教官。


 ライトはその言葉を聞いて安堵する。


 「それと、彼はどうします?」


 ライト達の後ろではマザコン男が(こう)(こつ)な表情で、未だスマートフォンに映っているマミイの写真に釘付けだった。


 「そうだな。おいお前! もう悪行を重ねるなよ! 善行を積んで行けばまた母ちゃんからご褒美が貰えるぞ!」


 「ああ! マミイの主君として恥じない生き方をするよ! マミイの貞操はこれ以上汚させない!」


 いつの間にか意気投合していたヒーロー教官とマザコンの男。


 「……いずれ紹介して貰わないとな」


 ヒーロー教官はマザコンの男に羨望の眼差しを向けながら、ぼそりと呟くと、急に身だしなみに気を配る。


 「何か言いました?」


 「コホン。いやなんでも無い」


 ライトは何を言ったのか気になり首を傾げるが、ヒーロー教官は咳払いをして、誤魔化した。


 そして、マザコンの男は「愛しているよマミイ。俺、もっと良い子になるからね」と頬を紅潮させながら去って行った。


 「さてと、私はあのアホ共を更生するために更生ルームに行く。お前はこのまま帰れ。母ちゃんも心配だろ?」


 「はい。この後、母のお見舞いに行ってこようと思います。まだ混乱していると思いますが、せめて医師の人に直接、容態を聞こうと思います」


 ヒーロー教官の気に掛ける言葉に、ライトは戸惑う事無く返事をする。


 「分かった。ではな」


 ヒーロー教官は平然とそう言うと、ヒーロー教官の周囲だけ空間が歪み、そのまま空間に飲み込まれるように消えていった。


 ライトはヒーロー教官が居なくなった事を確認すると、そのままカナリアが入院しているスウェーズ市立総合病院に向かう。


 ヒーロー教官は更生ルームに着くと、先程のチンピラ見たいな男達が(ろう)(ばい)しながら()(おう)()(おう)していた。


 「……」


 だが、ヒーロー教官は、チンピラ達を(いち)(べつ)するや否や、ある紙切れをポケットから取り出した。


 その書かれた紙に皺を寄せて見る。


 『監視されている。協力してくれ』と書かれていた文字を睨みつけながら……。


 ライトは、スウェーズ市立総合病院でカナリアの担当医師に容態を聞いてみたが、パニック障害や認知症が交互に起きていて、芳しくない状態だと言う事を告げられる。


 診察所の待合室で俯き、どうしたらいいのか? と憂鬱な思いで自問自答する時間が長く続いたが答えは出なく、そのまま帰宅するしかなかった。



ここまでお読み頂き、評価して下さった読者のみ様方、本当にありがとうございます。

9章「闇の綻び」はここで終わります。

次章からも是非ご一読ください。

よろしくお願いします。

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