8章 大差 14話
一同、その男に目を向けると、光を照らす(ライトイルミネイト)のメンバーとキャンディー、ガディアが、その不細工な中年の男に姿勢を正し敬礼する。
一体何事か? と思ったライトはどうしたらいいものか、困惑していた。
「やあ諸君。勤務中に失礼するよ」
「ご苦労様です。リベロ局長」
不細工な中年の男性が威厳ある風格でそう言うと、キャンディーは敬意を込めて労いの言葉を掛ける。
その不細工な中年の男性こそ、ボッチーマンと光を照らす(ライトイルミネイト)の組織だけでなく、警察庁のトップであるリベロ局長だった。
そんな中で、ヒーロー教官はリベロを睨みつける。
「なんだお前も居たのか。相変わらず品性に欠ける身なりだな」
「黙れ、お前こそ贅肉たっぷりのテカテカな油まみれな身体しおって。ナマケモノ見たいな生い立ちのお前には相応しい恰幅と体表だがな」
ヒーロー教官を見るなり潮笑うリゼロに対し、込み上がる怒りをそのまま口にするヒーロー教官。
「止めたまえ。上司にそんな棘のある口のきき方は」
キャンディーが珍しくヒーロー教官を堰き止める。
ヒーロー教官はキャンデーに叱られた事がショックだったのか、肩の力が抜けるように嘆息する。
「ふん。まあお前は学生の頃から万人を救うヒーローになりたいと喧伝していたが、実際はどうだ。障害年金で食って行くのが精一杯なお前など、万人を救う事は疎か、自分自身も救えない。哀れな末路を向かえないよう努力するのが関の山だ。フハハハッ」
愉快な気持ちでヒーロー教官を中傷するリゼロ。
ヒーロー教官は唇をひん曲げながら眉間に皺を寄せる。
「タルヴォ。お前もいつまでしがない刑事に徹するつもりだ? いい加減昇進したらどうだ? だがまあ、お前は薄汚い池の隅で雑務をしている方がお似合いか。フハハハッ」
今度はタルヴォに向け、嫌味を痛快な面持ちで口にするリゼロ。
「……精進しますよ」
タルヴォは眉を顰めながら、口にするのを嫌がるように暗い面持ちで言う。
「それにしても勤務中と言うのは誤りだったかな? 世間の声が大波で揺れていると言うのに呑気に軽食とは。どうやら君達は怪傑人の事を軽視しているようだね」
笑みを浮かばせながら嫌味を言うリゼロ。
「小休憩のため、私が勝手ながら皆様にホットケーキを提供したのです。非があるのならそれは私にあります」
ガディアは責任を負おうとしていたが、リゼロはそれを鼻で笑う。
「そう言う問題ではない。それにしてもミリイちゃん、君もキャンディー所長に負けず劣らずの容姿をしているね」
リゼロはガディアに突っ張ると、ミリイに下卑た笑みを浮かばせ、全身を舐めまわすように見つめる。
そして、ミリイに近付くリゼロ。
ミリイは危機感を感じていたが、上官の前で軽率な行動が出来ず、不安に満ちた表情をしていた。
すると、リゼロはミリイの前で止まると、大胆にもミリイのお尻を右手で撫でてきた。
まるで愛撫するように。
それを目にした全員が不快感を露わにしたような表情になる。
「や、やめて」
ミリイは目を瞑りながら震えた小声で言うも意味を成さない。
「エヘヘヘッ」
リゼロは堂々と痴漢行為をしながら周囲など気にも留めず、厭らしい笑みで撫で続ける。
すると。
ガシッ!
「うっ! 何をする!」
レイジックがリゼロの右手を強く鷲掴みにし、持ち上げる。
「いえなに、でかい害虫が貴方の手に寄生していると思いまして」
鋭い眼差しをリゼロに向けるレイジック。
その目と声にはハッキリと怒りが籠っていた。
「ふん! ふざけた事を!」
怒り心頭に発するリゼロはレイジックの手を振り払う。
そこで、キャンディーがリゼロの前に近付く。
「リゼロ局長。子供の体裁にも触れますので、どうか穏便に」
キャンディーは頭を下げ、リゼロに懇願する。
「良いだろう。私も今の光を照らす(ライトイルミネイト)の現状を視察しに来ただけだ。今日はこの辺で失礼する。それからライト・ヴァイス君」
リゼロがご機嫌斜めの様子で威厳よく言うと、ライトに目を向ける。
「……はい」
ライトはリゼロに悪印象を持っていた。
語気に重みを込めながら、緊張した面持ちで返事をするライト。
「君にはサポートを手厚くしたんだ。その厚遇に見合う働きを期待している。せいぜい私を失望させないでくれたまえ。まあ、この前の商店街の事件の全貌を見るからに、私は落胆したがね」
リゼロはライトに冷たい視線を向けながら辟易と口にする。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
8章「大差は」次回で終わると思います。
長文になってしまい申し訳ありません。




