8章 大差 9話
「となると手詰まりになりますよね。今までの怪傑人が犯行に至った後の死体現場と同じく」
ミリイは俯きながら、悄然とした様子で落ち込んでいた。
他の全員にも同じ思想が浮かんでいた。
「やっぱりその事で気になるんだけどさ、何で今までの怪傑人が起こした犯行の死体現場じゃあんなに証拠が出てこないんだろうな? まるで誰かに処理された後、見たいな感じが伺えなくもないし」
沈黙を破ったラーシュは顎を摘まみながら、ミリイの話から気になる点を取り上げる。
「手口が素人でないのは確かだ。証拠と呼べる物は一切浮き彫りになっていない。犯行に関しては正に神業だ」
レイジックは苛立ちが募っているかのようだったが、それを抑えながら搔い摘んで喋る。
そこで、タルヴォとレイジックがアイコンタクトを取るかのように横目を向け合う。
「まあ、その話は保留にしよう。二年間も証拠の出なかった事の疑惑が今になってさらけ出せるわけでもないしな」
「ああ」
タルヴォは後頭部をワシャワシャと掻きながらぶっきらぼうに言うと、レイジックは冷静に同意する。
「そう言えば、皆さんこれからの職務はボッチーマンで行われるんですか?」
ライトは気になっていた事を、粛々(しゅくしゅく)とした様子で聞いてみた。
「そうだよ。この前の一件で株式会社の場所が光を照らす(ライトイルミネイト)の活動拠点だって事が、何故かは分からないけど怪傑人に露呈してたから。だからボッチーマンを私達の第二の拠点にって、キャンディー所長が私達に通達してくれたの」
ミリイは偽る事無く、ありのままの状況を詳細に語ってくれた。
「警察署の隣でカモフラージュしていた俺達が、まさか更にその隣で身を潜めているなんて、敵さんも夢にも思わないだろうしな」
ラーシュがニシシ、見たいな企てるような笑みをする。
「仮にそれすらも露呈されてたら、俺らはどこにいても奴らの手の平で踊っている事になる。考えたくもないがな」
レイジックは危惧していそうな面持ちで、辟易と語る。
「考えすぎですよレイジックさん」
微笑しながらレイジックにそう言うミリイ。
すると、今までの不満が募っているかのように、ラーシュは貧乏揺すりをし始める。
「ああーもう。いつになったら怪傑人の足取りを掴めるんだ」
ラーシュは嫌気が差すようにしながら愚痴をこぼす。
すると、ラーシュの隣のカウンターチェアの椅子に座りながら、いつの間にか牛乳を飲んでいたヒーロー教官は、眉を顰めながら沈思黙考し始める。
「分かるぞ、その煩悶する気持ち。目の前に絶倒する程のナイスバディ―の女とラブホがセットで存在すれば、誰でそうなる」
ヒーロー教官は、子供と真面目に向き合うような親のような表情をラーシュに向けながら真摯に語る。
一同は、ヒーロー教官の顔を見ながら大きなため息を吐く。
「どう聞いたら女とラブホが話に出てくるんですか? しっかりしてくださいよ。頼りにしてるんですから」
ラーシュに呆れられながら指摘されたヒーロー教官はニヤついた笑みになる。
「安心しろ。私は多事多端だろうが東奔西走の身であったとしても、必ず狙った獲物は射貫いて見せる。ここおな。ただし女限定だ」
ヒーロー教官は卑猥な表現をすると、ミリイは捜査資料で顔を隠し赤面していた。




