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7章 孤高の定め 4話

 言葉が出てこなかった。


 あまりにも理解できない団結。


 そこで、中年の女性が近くのテーブルに置かれている台拭きをを手に取り、眉を顰めながらライトの所に向かう。


 「こいつでちゃんと拭きな。拭き終わったらさっさと出てくんだよ。馬鹿なあんたが悪い」


 中年の女性は冷たくそう言いながら、台拭きをハンカチで鼻に当て押さえて四つん這いになっているライトの前に放り投げる。


 中年の女性は、ライトの自業自得だ、と判断していた。


 遮断され、捻じ曲げられた真実。


 その事実を目の当たりにしたライトは、有無を言えず、辛い表情で黙って台拭きを手に取り、床に散らばっているナポリタンやオムライスを片付けていく。


 「ライト!」


 エレアはライトが何も言い返さず、指示通りに黙々と拭く姿を見て驚愕していた。


 そこで、エレアはレイベを睨みつけるが、レイベはそんなエレアを潮笑う。


 エレアはこの状況は変えようがない、と判断し、一度深呼吸をする。


 「……私にも台拭きを下さい。それから割れた食器を片付けるための用具を一式……貸して下さい」


 中年の女性に向け、悔しそうな表情で意を決した言葉を口にするエレア。


 中年の女性は「待ってな」と冷たく言うと厨房に向かった。


 「――そんな。エレア。君がそんな事する必要はないよ。これは僕が招いた事だ」


 「良いのよ。私も今まで貴方が酷い仕打ちを受けてきたのに何もしてあげられなかった。せめてもの償いとして手伝わせて」


 あたふたするライトに対し、エレアは両膝を床に付け、ライトと同じ目線で暖かい笑みで答える。


 その光景を見たレイベ達は嫌味ったらしく笑う。


 他の生徒達の何人かも冷笑していた。


 エレアは奥歯を噛みしめていると、掃除用具を一式とゴミ袋を持ってきた中年の女性が戻って来た。


 不愛想な表情でエレアに無言でそれを渡すと、エレアはすぐにライトを手伝うため掃除を始めた。


 「……ありがとう。エレア」


 ライトは謝罪ではなく感謝の言葉を、思いを込めて口にする。


 エレアは微笑みながら軽く頷き、ライトと共同で掃除を進めていった。


 中年の女性は黙って厨房に向かって行く。


 レイベ達は鼻で笑うと、最後にルメオンがライトの目の前で唾を床に吐きかけた。


 ライトは悄然とした表情でその唾を吹いていく。


 エレアは心の底から怒りが込み上がってくるのを抑え、ただ黙ってレイベ達を睨みつける。


 エレアの眼差しをあしらうように笑って食堂を出ていくレイベ達。


 出ていく最中、他の食事をしていた何人かの生徒と、何故か笑いながらハイタッチなどしていた。


 どこまでも悪質であり、(かん)()なレイベとその取り巻き達。


 そして、ライト達が掃除を終える頃には、生徒達は全員食堂を後にし、いつしかお昼休みは過ぎていった。


 午後の授業を受ける前に、エレアが「助けてあげられなくてごめんなさい」と深刻な面持ちで謝罪の言葉を口にしてきたが、ライトは「十分助けてくれたよ。今度お礼をさせて欲しいんだ」と笑顔で答えると、エレアは安堵した表情で「じゃあ、その日はデートね」と笑顔でそう言いながらライトに手を振って去って行った。


 本当なら嬉しいはずのライトだったが、先程の騒動が尾を引いていたせいか素直に喜べなかった。


 どこか暗雲な影がライトの表情に(まと)わり付いていた。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

7章「孤高の定め」はここで終わります。

次回からも更新していきますので是非ご一読して見て下さい。

宜しくお願いします。

また、ここまで評価して下さった読者の皆様方、本当にありがとうございます。


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