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7章 孤高の定め 1話

 そして、二階の教室に着くとその中に踏み入ったライト。


 教室に入った途端、談笑していた生徒達が声を止め、ライトを睨みつける。


 明らかに嫌悪感を抱いているような冷たく軽蔑しているような目。


 しかし、ライトは臆せず、開いている席に向かう。


 ライトの行動を監視でもしているかのように、ライトから目を離さない生徒達。


 ライトは前の席に着くと、すぐに教科書やノートなどの筆記用具を出した。


 すると、後ろの席の男子生徒が、ライトの椅子を蹴ってくる。


 ライトは一瞬驚いたが背後を振り向くことなく無視した。


 ライトの座っている椅子を蹴った男子生徒はそれが気に食わなかったのか、強く舌打ちをする。


 相も変わらず、虐めの渦中に居たライトだったが一カ月前と違い、動悸や気持ちが向上する事無く、平常心を保てていた。


 そこで、リビアムが教室に入ってきた。


 顎を少し上げ、威厳があるとでも主張するかのような佇まい。


 リビアムは(きょう)(だん)に着くと、ライトと目が合う。


 睨みつけるリビアムに対し、真っ直ぐな目を向けるライト。


 他の生徒達もライトに鋭い視線を向ける。


 教室内は肌で感じ取れるような重圧感が(はび)()る。


 その重圧感に一人で耐えるライト。


 「……では、授業を始める」


 てっきり、()()(ぞう)(ごん)するかと思ったリビアムだったが、人相の悪い面持ちで教科書を開き、黒板に授業の内容を書き始めた。


 ライトは何故、何も言ってこないのだろう、と首を傾げていた。


 他の生徒達は嫌気が差すような面持ちでリビアムの授業を受ける。


 そんな中でも、気持ちを切り替えたライトは真摯に授業を受けていた。


 午前の授業では教師達からは嫌味な言葉は一切なかったが、生徒達はライトに、陰湿なやり口での暴力を振るっては、暴言を口にする。


 だが、ライトは気丈に振る舞い、午前の授業を終えた。




 昼休みになり、ライトはお昼御飯を食べよう、と一階の食堂へと向かう。


 廊下を歩く度に、蔑視の目や悪口を言われるが、前を向いて歩くライト。


 生活保護の受給金のおかげで、ようやくまともな昼食が取れる。


 本当は人を避けて食べたいならお弁当を持参して来て、人気の居ない場所で食べるのがベストなはずなのだが、ライトは逃げたくない、と言う想念があり、敢えて人が集まる場所で食べる選択をしたのだ。


 広い食堂に入っても一限目の教室の中に入った状況と同じだった。


 一つの丸いテーブルを囲うようにして設置させられた椅子に座っていた生徒達が冷たい目をライトに向ける。


 十五台のテーブルの内、十四台の席に座っていた生徒全員からの、冷ややかな目。


 ライトはそれを一瞥すると、長いテーブルのカウンターへと向かう。


 「来るなや。飯が不味くなる」


 「なんか私、汚物を口にしているみたいで吐き気がしてきたかも」


 何人かの生徒を横切る度に、男女の生徒から誹謗中傷の言葉が耳に入ってくるライト。


 さすがのライトも、長時間に渡り、この悪環境に疲労が蓄積していたため辟易とした面持ちが伺え始めた。


 なんとか暴言を横で吐く生徒達を横切り、カウンターに着くと、奥に見えるキッチンに居る人に声をかける。


 「すみません。ナポリタン一つください」


 「はーい。ちょっと――待ってな」


 ライトの要望に愛想よく返事をしてきてくれたかと思いきや、厨房に居たエプロンを着た年輩の女性はライトの顔を見るや否や、眉間に皺を寄せ、野太い声で威圧するように口にする。


 ライトの悪名は食堂にまで広まっていた。


 少しすると、不機嫌な面持ちで最程の年配の女性がナポリタンが乗せられた皿を運んでくる。


 カチャン!


 割れるんじゃないか、と思える程、カウンターに雑な置き方をする年輩の女性。


 誰がどう見ても苦情を入れる案件だが、ライトは浮かない顔で「ありがとうございます」とお礼の言葉を忘れずに言いながら現金を支払う。


 それでも年配の女性は不愛想な表情で無言でかっさらうような手際でお金を受け取ると、黙って厨房に戻った。


 ライトはため息を吐きながら、近くにあるトレイを取り、その上にナポリタンとフォークを乗せ、空いている席に向かって行く。


 カウンターから近い所に開いていた席にスムーズに座れたライト。


 フォークを片手にナポリタンを食べようとしたその時。


 「隣、良いかしら?」


 ライトの背後から、聞き覚えのある声がしてきた。


 振り向いた先に居たのは、エレアだった。


 「――エレア!」


 ワンオンス高校で交友関係を持たないライトに取っては、気さくに話しかけてくれるだけでも、慣れないものだった。


 なので、当然の事ながら、ライトは驚愕する。


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