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6章 急変と、ようやくの出会い 13話

 「また愚民が来やがったよ」


 「知ってるか。東洋じゃ、そう言う奴の事を(やく)(びょう)(がみ)、て言うんだぜ。ハハハッ」


 「じゃああいつは、(やく)(びょう)(がみ)の頂点に居る下劣な(やまい)の神だな。フッ」


 廊下を歩く途中にライトに悪態をつきながら潮笑う生徒達。


 陰口が一気にエスカレートしていた。


 ライトは気にせず、二階に続く階段を上がっていく。


 一限目に受けるライトの科目は世界史だった。


 停学明け早々、よりによってリビアムの授業。


 ライトはリビアムの事を考えていくと、一カ月前に起こした事件が鮮明に脳裏を過っていく。


 額から滲み出る冷や汗を手の甲で拭い、軽く深呼吸をし、階段を上がっていく。


 「おはよう」


 すると、二階から下りてくる一人の女子高生がライトに向け笑顔で挨拶をしてきた。


 ブロンドのロングヘアーの髪にパーマをかけ、眼鏡をかけた二重瞼のインテリ系女子。


 白いガーディガンと黒いハーフスカートを履き、白いヒールの靴を履いていた。


 第一印象がインテリ系に見えるが、どこか麗しさが感じられる。


 「お、おはよう」


 いつ以来だったか。


 学校で自分に向け日常の挨拶をしてきた人物に戸惑うも、何とか挨拶を返すライト。


 「ようやく挨拶してくれたわね」


 その女子高生は、ライトが挨拶を返してくれた事が嬉しかったのか、頬に笑みを浮かばせる。


 てっきり、ライトをからかってきた不届き者かと思ったが、その女子高生は善意でライトと挨拶を交わしていたのだ。


 ライトは、どういう意味なのか、さっぱり理解できなく、困惑気味だった。


 「え、どういう事?」


 ライトは目を大きく開きながら聞いてみた。


 「貴方は気付かなかったかもしれないけど、私、根気よく挨拶してきたのよ。すれ違う時には必ず」


 笑みを浮かばせながら親切に説明してくれる女子高生。


 「そうだったんだね。ごめん。僕は、その……」


 少し動揺しながらも自分の経緯を説明しようとしたライトだったが、途中で言葉を詰まらせると暗い面持ちで俯く。


 殆ど初対面の相手に、虐められるのを避けるため、人と話さないどころか、人を視界に入れたくなかったから、と口にするのは抵抗があったライト。


 いざ言おうと思えば思う程、辛くなっていく。


 「大丈夫よ。分かってるから」


 そんな、動揺し塞ぎ込んでいるライトを潮笑う事無く、女子高生はおっとりとした口調で喋りかけてくれた。


 ライトの悪行と言われている噂を()()みにしていなかったその女子高生は、事情はさておき、ライトの身を案じていたのだ。


 ライトは、え、と驚き、笑みを浮かべる女子高生に視線を戻す。


 「うん、ありがとう」


 すると、自然にライトの表情からも笑みがこぼれる。


 いつの間にか二人は笑いながら向かい合っていた。


 お互い詮索しなくとも、何故か打ち解け合っていた。


 「なんだか、貴方とようやく喋れたと言うより、ようやく出会えた気がするわ」


 「うん。僕も」


 女子高生は愛くるしい笑みでそう言うと、ライトは爽やかな笑みで返事をする。


 初々しい友人のような光景。


 「私はエレア・ニーベル」


 「僕はライト・ヴァイスだ」


 お互いに笑みを浮かべながら自己紹介をするライトとエレア。


 すると。 


 「どけよクズ! 上がれねえだろうが!」


 ライトの後ろから二階に上がろうとしていた男子生徒が、ライトを怒鳴りつける。


 「ご、ごめん」


 ライトは困惑しながらも、謝罪し左に()ける。


 それを見たエレアは眉間に皺を寄せる。


 「何よ。貴方が横に移動すれば進めるじゃない。わざわざ人を怒鳴りつけるような事じゃないでしょ」


 エレアは強い口調で指摘すると、その男子生徒はエレアを睨みつける。


 ライトは中央に居て、左右どちらにも(ひと)一人(ひとり)通れるスペースが十分にあったはずだが、ライトが気に入らなかったその男子生徒は、憂さ晴らしも含め、ライトに暴言を吐いたのだ。


 「ちっ」


 その男子生徒は聞こえやすいように舌打ちをすると、エレアの肩にわざとぶつかっていき二階へ上がっていく。


 肩がぶつかった衝撃で身体がよろけるエレアを見たライトは咄嗟にエレアの肩を掴み支える。


 「あ、ありがとう」


 一瞬、驚いたエレアはライトの真っ直ぐな瞳に目を向けると、安堵したような声音でお礼の言葉を口にする。


 「怪我がなくて良かったよ。――あ、ごめんね」


 ライトも安心したのか、女性に触れている事に気付くと、申し訳ないような素振りで慌ててエレアから離れる。


 「そんな気にしなくてもいいのに。それじゃあねライト。今度どこかでお食事にでも行きましょ」


 エレアはクスクス笑いながら、手を振りながらライトを横切り一階へと下りていった。


 ライトはエレアの優しく活発な人間性に魅かれたのか、呆然として見送った。


 再び前を向き、軽く深呼吸をすると、階段を上がっていくライト。


 ライトは二階の廊下を歩いてた時に、先程、自分を庇ってくれた事に対してのお礼をエレアに言う事を忘れていた事に気付く。


 思わず、頭に手を添えるライト。


 何故、その場でお礼を言えなかったのかはライト自身、気付いてなくとも、それは(のち)に気付くことになる。


 そう、誰しも恋をした瞬間と言うのは、思考など壊れているのだから、と。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

6章「急変と、ようやくの出会い」はここで終わります。

次回からも更新していきますので是非ご一読して見て下さい。

宜しくお願いします。

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