6章 急変と、ようやくの出会い 12話
謹慎処分が課せられていたライトは、あと二日で解除されると言う日に、一通のメールがライトのスマートフォンに届いた。
差出人はボッチーマンからだった。
『急で申し訳ないが、ライト君の事情聴取を予定日の次の日である、六月八日に変更してもらって構わないだろうか?』
と言う内容だった。
六月八日がライトの停学処分が解除される日。
その前日に光を照らす(ライトイルミネイト)達から事情聴取を受けるはずだったのだが、ライトの停学明けの日にずらして欲しいと言う内容だった。
ライトは特に断る理由もなく、すぐに『問題ありません。では六月八日の日に改めて事情聴取の方、宜しくお願いします』と丁寧に書き送信した。
すると、すぐにボッチーマンから『ありがとうライト君。今から学校に行くと思うと緊張や不安で仕方ないと思うが、我々ボッチーマンは君の味方であり、隣に居る。それを忘れないでくれ』と優しさの籠ったメールが送信された事に、ライトは涙が込み上がりそうになりながら『ご迷惑とご心配をお掛けして申し訳ありません。これからは、ボッチーマンに居ても恥ずかしくない生き方をしてみせます。なのでご指導ご鞭撻を宜しくお願いします』と指先に決意を込め送った。
(自分を抑制し、病気や人間関係に苦しめられない生き方を見つけて見せる。そして、一人でも多くの人を笑顔にしたい)
ライトの心の中では、そんな情念がいつの間にか湧いていた。
そして、すぐにボッチーマンから返信が届く。
『君は既に偉大だ。若い子は目の前に壁があると大抵、その壁を超えるのを挫折してしまう。それは大人も例外ではない。だが君はそんな壁を前にしても超える所か、破壊し、再築しようとしているようにも思える。君に取っての破壊は自身の過去との決別を意味し、構築は自ら更なる高い壁、つまり、更なる難局の道を歩もうとしている。その壁はとても高く硬質なものなんだろう。だからこそ、そんな君の隣に居る事を恥じない我々でありたいと思っている。こちらこそよろしく頼むよ。ライト君』
最後に差出人の名前である、ガディアより、と書かれていた。
ライトは、スマートフォンの画面にギラギラとした熱い眼差しを向けながら『改めまして、こちらこそ宜しくお願いします』と書き、送信した。
言葉は交わさずとも、文字に籠められた互いの想いは、結束と信頼が交差していた。
そして、停学明けを迎えた当日。
朝は立眩みや、目眩、下痢などの自律神経失調症の症状に悩まされていたライトだったが、学校に行くと思うと、それは些細な問題だった。
それどころか、心機一転として通うのだから、今の自分の病気に恐れる気持ちはどこにも無かったライト。
軽い朝食や支度を済ませ、大きく深呼吸をし、家を出た。
日差しがいつも以上に眩しく思えたが、一カ月近くも謹慎させられていたら致し方ない事ではある。
ボッチーマンがワンオンス高校に連絡をし、ライトの容体を伝えてくれたおかげで、ボランティア活動が免除されたが、その分、謹慎としての任が厳しく課せられたため、スウェーズ市立総合病院から退院後、自宅に居たライト。
カナリアのお見舞いも、停学明けから可能と言う条件付き。
しかし、電話でスウェーズ市立総合病院に連絡をした結果、カナリアは今も不安定な状態が続いているため、面会は遠慮した方がいい、と言われ、ライトはカナリアとの面会を断念した。
早く症状が良好に赴き、一日でも早くカナリアと面会したかったライト。
そんな歯痒く、落ち着かない気持ちを心の隅に押し込むようにして、いつもの通学路を歩くライト。
ライトはいつもと変わらず、周囲から冷たい視線を向けられる。
しかし、ライトは一カ月前とは違い、支えとなってくれている人の想いが、背中を押してくれているような感覚があり、俯くことなく、真っ直ぐな瞳で前を向いていた。
そして、ワンオンス高校に着くや否や、登校中の生徒達がすぐにライトに気付き、蔑視の目を向ける。
一カ月前の事件が、更にライトの汚名に拍車をかけていた。
しかし、ライトは気持ちが閉塞する事無く、真っ直ぐに前を向いたまま、校門を通り、校内に入った。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
6章「急変と、ようやくの出会い」は次回で終わると思います。
長々と続いて申し訳ありませんが、また是非ご一読して見て下さい。
宜しくお願いします。




