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6章 急変と、ようやくの出会い 10話

 窓を閉めていても喧騒は絶えずタルヴォの耳に入ってくる。


 人が相争う経緯は様々だが、やはり抗議なども人が傷付け合う発端でしかない、と思い嫌気が差すタルヴォは小さなため息を吐く。


 そこで、タルヴォは無意識に、視線を株式会社の正面の道路に向ける。


 すると、いつの間にか五人の覆面を被った謎の人物達が点在して立っていた。


 明らかに株式会社に正式なアポイントを取った訪問者とは言えない風貌。


 その内の四人の覆面達の手にはアサルトライフルが握られていた。


 「――フゥッ」


 驚き思わず息を呑んでしまうタルヴォ。


 タルヴォが気付いた事を確認した覆面の一人が、腰に何かを巻き付けていた(ぶつ)を片手に手にしたかと思いきや、何やらもう片手の人差し指でその手にしている何かを抜くような動作をしてきた。


 「嬢ちゃん! ラーシュを連れてここから退避だ!」


 タルヴォは目を大きく開き、声を張り上げる。


 「え?」


 ミリイは、タルヴォの言ってる意味が分からず、キョトンとした表情だった。


 タルヴォが片手を伸ばし逼迫した表情を向けてきたのは視認できたが、未だ脳がその意図を理解できずにいたミリイ。


 しかし、タルヴォの背後の窓から緑色の片手サイズの物体が視界に入った時には、ミリイの脳波が危険を瞬時に察知した。


 ミリイの目つきは鋭くなり、一秒の間にコンマ一秒を切る反射神経と動きのスピードでラーシュの首根っこを掴み、強引にドアまで引きずって走り出す。


 「ボギャ! ぐっ、ぐえー⁉」


 強く尻餅をついた衝撃で驚愕して起きたラーシュは状況が理解できず狼狽しながらミリイに引きずられていく。


 首を絞めつけられながら引きずられていくものだから、ラーシュの表情は真青(まっさお)になってしまう。


 バリーン!


 窓ガラスが割れたそこから投げ付けられたのは、手榴弾だった。


 窓ガラスが割れた直後、逸早くミリイはラーシュを連れてドアから出るとタルヴォも急いで続く。


 ドアから出てすぐさま左の廊下に向け走り出した直後。


 ドカーン!


 派手な爆発音がタルヴォ達の部屋から鳴り響き、爆風で辺りは吹き飛んだ。


 その三階のタルヴォ達が居た部屋の窓ガラスも全て割れて破片が吹き飛んでしまう。


 タルヴォ達が居たオフィスは一瞬にして廃墟と化したのだった。


 「ごおっふぉ! ぐおっふぉ! 何がどうなってんの⁉」


 廊下にまで充満する黒い煙の中、状況が掴めないラーシュはむせながら困惑していた。


 「襲撃されたんだ! 覆面を被ってる連中にな!」


 「まさか、(かい)(けつ)(じん)⁉」


 タルヴォは自分達が出て来た部屋側を睨みつけながら警戒態勢に入ってそう口にすると、ミリイは仰天したような表情でその正体に驚いていた。


 すると、今度は外から銃声が聞こえてきた。


 覆面を被った連中が、タルヴォ達が居た部屋に向けアサルトライフルで発砲してきた。


 「きゃあー!」


 その騒乱を耳にし、事態を目にした抗議活動をしていた市民が、覆面を被った者達の居る反対側の道路に向け慌てながら悲鳴を上げ走り出していく。


 逃げ惑う一般市民には目もくれず、(しつ)(よう)にタルヴォ達が居た部屋に向け発砲を続ける覆面の者達。


 「大体状況は分かったけどよ、どうすんだ⁉ こっちも武器を持って応戦しようにも全部ロッカーの中だぞ!」


 片膝を床に付けながら切迫した表情で言うラーシュの言うように、武器保管庫はタルヴォ達が居た部屋の窓際に設置されていたため、窓に向け銃を乱射してくる場所に迂闊に近付くのは得策とは言えない状況だった。


 タルヴォも武器が取れない状況に「クソ!」と怒りを込めてそう口にする。


 「このまま二手に分かれるぞ! 俺達三人でこのまま光を照らす(ライトイルミネイト)達を(せん)(めつ)する! お前ら二人はこのまま武器保管庫がある箇所を打ち続け奴らに武器を握らせるな!」


 「ああ、今こそ友達(だち)の仇を打つ時だ!」


 猛勇し合う覆面達は二手に分かれようとする。


 それにしても、何故覆面を被った者達は光を照らす(ライトイルミネイト)の存在やメンバーだけでなく、武器の配置場所まで熟知していたのか?


 「なあ、このまま奴らが二手に分かれてこの階を襲撃しに来たら俺ら終わりじゃね?」


 「こんな時に冷静で冷酷な事言わないでくんない!」


 ラーシュのコメディドラマのような間抜けた冷静っぷりにミリイは剣幕を突き立ててツッコんだ。


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