表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/166

5章 勃発の予兆 5話

 ラーシュはまた似たような電話か、と思い(へき)(えき)とした表情になる。


 「タルヴォさーん。出て下さいよ。また俺あんな電話出たら逆探(ぎゃくたんち)してそいつの所にC4身体に巻き付けて襲撃しかねませんよ」


 心底やる気がないラーシュは、だらけた態度でタルヴォに頼む。


 「たく」


 タルヴォもめんどくさそうにしながら、仕方なく電話に出る。


 「俺らいずれ()(せん)されるかもな」


 気怠そうに言うラーシュ。


 「そうなりたくなかったら、少しでも気合を入れたらどうだ。日頃からそう習慣付けて置けばいざとなった時にも対応出来る。継続は力なりって言うだろ」


 気遣いながら淡々と喋るレイジック。


 「俺は本番で力を発揮できる()()なタイプなんだぜ。警察採用試験だって三日三晩で成果を出せたぐらいだからな」


 (おや)(ゆび)を自分に()し、自信満々の態度で言い退()けるラーシュ。


 レイジックは呆れてため息しか出てこなかった。


 「おいおい兄ちゃん。そう言う冗談はよそでやってくれ。それに自分が(かい)(けつ)(じん)だなんて警察の耳に入れば、(きょ)()(こく)()(とう)(ざい)や公務執行妨害に当たる。大体三カ月以上から十年以下の懲役、罰金も五十万を超える。十八歳未満なら話は変わるが、兄ちゃん、声からして二十(はたち)は過ぎてるだろ? 今回は聞かなかった事にしてやるから、これっきりにしておきな」


 呆れながらそう口にするタルヴォ。


 ラーシュは模倣犯か、としょうもない電話にタルヴォ同様に呆れ、椅子に背もたれながら大きな欠伸(あくび)をする。


 しかし、レイジックだけが鋭い目付きでタルヴォが耳にしている受話器を睨みつける。


 「最近の株式会社の社員は意外と刑罰に詳しいんだね。それとも貴方は警察なのかな?」


 電話の主の声はイケボのような男。


 その男は微笑しながらタルヴォをからかってきた。


 「アホな事言ってんじゃねえ。もう切るぞ」


 心底呆れたような口調で電話の主をあしらうタルヴォ。


 「なら僕が(かい)(けつ)(じん)だと言う証拠をお見せしよう。窓から外に居る人達を見て見ると言い」


 優美に語る男の声に、タルヴォは何故か無視できない案件だ、と直感がそう伝えてきた。


 眉を(ひそ)めながら受話器を横に置き、タルヴォは後ろの窓に近付き、窓から外に居る人達を眺める。


 至ってごく普通の日常。


 ジョギングをする女性や、犬の散歩をしている中年の男性。


 これといって変化は感じない風景だったが、次の瞬間。


 ――ドン! 


 どこか遠くから、発砲音が聞こえてきた瞬間にはスマートフォンで電話をしていた男性が眉間を撃たれ即死した。


 「なっ!」


 タルヴォは驚愕し、全身が震えだす。


 いきなり起きた非現実は瞬く間に近くに居た人達にパニックを起こさせる。


 けたたましい悲鳴が上がり、すぐにレイジックとラーシュも立ち上がり窓に向かい外で起きた事件を目の当たりにする。


 「嘘だろ、おい」


 ラーシゥは動揺し、すぐ近くに居るレイジックは怒りで身体を震わせていた。


 そして、タルヴォは受話器を手にし、先程の男に剣幕を突き立てながら受話器を耳に当てる。


 「おい! どういうつもりだ⁉」


 「これで少しは信じてくれたかい?」


 怒鳴りつけるタルヴォに対し冷静に答える男。


 そこで、タルヴォは怒りに身を任せては状況を見誤るのでは、と判断し、一度気持ちを落ち着かせる。


 「……お前さんが狂気な輩だって事は理解した。だがな、だからと言ってお前さんが(かい)(けつ)(じん)だと言う証拠にはならねえぞ。ま、どっちにしても務所にぶち込んでやるがな」


 タルヴォは威嚇しながらそう言いうと、ラーシュとレイジックに逆探知をしろ、と(ゆび)()()を出し、ラーシュは真剣な面持ちで頷きすぐに行動に移る。


 レイジックは先程射殺された男性に(かい)(こん)の意を込めた眼差しを向けると、ラーシュの後に続く。


 机の大きい引き出しから逆探知の機械を取り出し、電話の主の通信を辿る。


 光を照らす(ライトイルミネイト)は逆探知の際、業者がいなくても、権限と知識を持っているため、独断で行うことが出来る。


 「頑固な人だ。だが今ので(かい)(けつ)(じん)ではない、と楽観視出来ないのも事実のはずだ。今のはこれから起きる事態の余興にもならない前座だ。そこで改めて貴方達の認識を変えて頂きたい」


 「良いだろう。だがこれ以上お前さんの好きにはさせねえぞ。必ず捕まえてやる」


 男の爽やかな声に対し、タルヴォは怒りを込めて口にする。


 「では、これから起きる悲劇の第一幕の舞台の場所を教えよう。だがその前にスピーカーに切り替えてもらえるかい? 他のメンバーにも耳にしてもらいたいからね」


 涼やかでありながら丁寧に話をする男。


 タルヴォは違和感を感じていた。


 まるで、光を照らす(ライトイルミネイト)の存在を知っているような(ほの)めかし方をしてくるような気がする、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ