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5章 勃発の予兆 1話

 商店街付近での事件発生の二十五分前。


 ボッチーマンの事務所の隣にある三階建ての雑居ビル。


 その二階の社内で、(かい)(けつ)(じん)の捜査を任された光を照らす(ライトイルミネイト)の四人のメンバー達が事務処理をしていた時に事件は起きた。


 清潔感あるオフィスでパソコンを挟んだ状態でキーボードを叩く音だけがひたすら鳴る。


 「ああー。やってらんねえ」


 事務処理の仕事に嫌気が差してきたラーシュが両手を後頭部で組みながらオフィスの天井のLEDの蛍光灯をボーと見上げる。


 「ちょっとラーシュ君。真面目にやってよ」


 すぐ左隣にいるミリイが不貞腐れながらそう言う。


 「だってよ、俺ら警察内で選ばれたトップだぜ。なのに毎日毎日、事務処理なんておかしいだろ。しまいには他部署の奴らに、ただ飯は上手いか? なんて聞かされた日は、目が血走って、その日一睡も出来なかったんだからな」


 過去の事が脳裏を過り、不機嫌になっていくラーシュ。


 そこで、黙々と事務処理をしていたタルヴォが軽くため息を吐いた。


 「まあ、俺らが事件現場に駆け付けた時には死体以外と対面はしてないからな。現場検証をしても(かい)(けつ)(じん)の行方を捜す証拠もなけりゃ、糸口すらない。立証も夢のまた夢だ。何の成果も上げずやる事ないなら、事務処理でもしてろ、て言う上の言う事もごもっともだ」


 タルヴォの落ち着いた言葉にげんなりしてくるラーシュ。


 横目で、「早く仕事しなよ」と訴えかけるような目をラーシュに向けるミリイ。


 「レイジックもタルヴォさんと同じ意見?」


 ダラダラした態度でラーシュがそう聞く。


 「大体な」


 レイジックは冷静にそう答える。


 だが、その目は獣のように鋭くなっていく。


 「だが俺はこのまま終わる気はない。上の連中の犬だろうが虫除けだろうがやる代わりに、必ずあの(かい)(けつ)(じん)(とも)に清算してもらうがな」


 その鋭い声に他のメンバー達の手が止まる。


 ラーシュだけでなく、やはり光を照らす(ライトイルミネイト)のメンバー全員が、(かい)(けつ)(じん)を捕まえたい、と言う願望があるからこそ、レイジックの言葉に痛感させられたのだ。


 「俺ら光を照らす(ライトイルミネイト)が活躍できる日は来るのかね」


 能天気な様子でラーシゥはそう言うと、テレビのリモコンに手を伸ばし、正面の斜め上に取り付けられている、小さいテレビの電源を入れる。


 「ちょっとラーシュ君! 勤務中!」


 「これだって立派な情報収集だぜ」


 しかりつけるミリイの声などお構いなしに、涼し気な表情で笑みをこぼしながらラーシュはそう言う。


 「物は言いようだな」


 レイジックは少し呆れながらそう言うと、横に居るタルヴォは鼻で笑う。


 「それにしても、ここ最近はギャング集団の横行が絶えませんね。このまま治安や経済が悪化していけば、近い将来、貧困社会だけでなく、更なる危機に我々イグレシア国民は直面する事になるでしょう」 


 「そうですね。皆さんは覚えていらっしゃるか分かりませんが、二年前亡くなったプロレスラーである(きょう)(かく)()(どう)のヴァン・ヴァイスさんが経済に多額の寄付をし、それをきっかけに多くの有名人達も寄付をするようになりました」


 たまたまテレビで取り上げられていたのは、「現在のイグレシア国」と言う特番だった。


 キャスターの若い男性と経済学者の年輩の女性が深刻な面持ちで議論し合っている。


 経済学者は続けて喋る。


 「その直向きな姿勢に感化された国民の皆さんや政治家達も努力を(おこた)らないようになり、その()()あって、少子化率は上がり、貧困根絶に向けようと、発破も掛かった次期もありました。しかし、現在の状況が続けばイグレシア国だけでなく、世界が滅びかねません」


 ラーシュはつまらなさそうにテレビを見て、他の三人は真面目に仕事をしていた。


 「正に世界は危機に直面している、と言う訳ですね」


 凄みを利かせるようなキャスターの言葉に真剣な面持ちで頷く経済学者。


 「では今回、特別ゲストとしてお迎えしました、大統領立候補者のワグナ・サーキュリーさんにお話しをお伺いしたいと思います」


 キャスターの言葉の後に、現場で撮影されているカメラがテーブルの上で両手を組む経済学者の右に居る男性のワグナに向ける。


 白い前髪を分け、黒縁眼鏡をかけた身なりの整った若い男性。


 グレーのスーツが似合う、若手社長のような風采が感じられた。


 「宜しくお願いします」


 両手を組みながら軽く頭を下げるワグナ。


 「ワグナさんは若干二十七歳にして、人気ナンバーワンを誇る次期大統領候補ですからね。広い視野を持ちながら多くの人達の声を耳にし、国民の皆さんと寄り添ってきた人望の厚い方なんです」


 キャスターは視聴者の人達にワグナの近況を軽く伝えると、ワグナは、「そんな、(おお)(ぎょう)ですよ」と少し照れ笑う仕草で現場を和ませる。


 「(けん)(そん)なさらないでください。では早速お伺いしたいのですが、ワグナさんは今の社会をどのように捉えていますか?」


 キャスターのありきたりな質問にワグナは眉を(ひそ)める。


 「(かんば)しくないのは事実だと思います。経済、環境、社会の諸問題は切っても切れぬ縁です。どちらか一方が衰退してしまうと、当然ながら他の二つにも影響を与えてしまいます。先程仰っていた少子化や貧困社会が悪化してしまえば、人口減少にも繋がります。なので早急に諸問題の同時解決が必要不可欠なのです」


 真摯に説明するワグナに、共感するかのように頷くキャスターと経済学者。


 「問題を解決するにも、二年前から話題となっている(かい)(けつ)(じん)こそが、イグレシア国を脅かす脅威、(がん)(しゅ)なのです。早急に排除しなければ、英雄と呼ばれる有名人達が根絶され、世界からヒーローは居なくなるでしょう。そうなれば教本する存在が消え、これから世界を担う子供達は、誤った道を辿る事を余儀なくされてしまいます。諸問題を解決するにも、将来の子供たちの力が必要なのですから」


 神妙な面持ちで語る経済学者に、キャスターは深刻な面持ちで頷く。が、ワグナだけは俯き、納得している感じが伺えない。


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