表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/166

4章 開かれた劇場 12話

 すぐにヒーロー教官がその弾に向け指を鳴らし、更生ルームへと飛ばそうとする。


 しかし、その執念の弾丸は予想外の軌道を見せた。


 指を鳴らす直前、二発の弾がぶつかり合い、その二発の弾はヒーロー教官の予想外の軌道にずれた。


 そして、その二発の弾の一発は運悪く、ライトの右肩に当たり、その反動で身体を右に逸らしてしまうと、逸らした方向から迫ってきていたもう一発の弾が……。


 「うっ!」


 最悪な事に、六十代の女性の首からかけているプラカードを貫通し、右の肺に直撃した。


 ライトとヒーロー教官は驚愕な表情で六十代の女性に目を向ける。


 「おい! ラーシュ!」


 「言われなくても分かってるよ!」


 黒髪の短髪の男が、オレンジ髪のくせっけの若い運転手、ラーシュに語気を強め急かすように言うと、ラーシュは怒鳴り返す。


 すると、特殊警察車両は速度を上げ、商店街の入り口付近に居る覆面達とライト達の間を割って入るように止まる。


 執念深く撃っていた覆面の者もその場で止まるが、射撃は(おこた)らない。


 取り残された他の隊員達も、すぐさま特殊車両の横に身を隠す。


 「くそ!」


 短髪の黒髪の男が、六十代の女性の傷を悔やまれる思いで見る。


 すると、隊員の内の一人である中年の男性が六十代の女性に駆け付けると、ライトとヒーロー教官に険しい表情で目を向ける。


 「大丈夫か⁉」


 白髪で渋い顔でありながらダンディーな面がある中年の男性が、ライトとヒーロー教官の身を案じる。


 「私は殆ど無傷だ。こいつは撃たれてるが致命傷ではない。それよりタルヴォ、この女性だ!」


 その中年の男性はタルヴォ。


 「ああ、分かってる!」


 ヒーロー教官の報告にタルヴォは頷くと、急いで胸に取り付けているトランシーバーに向け、救急車に指定の場所に来るよう連絡を取る。


 そのルートは、先程十名の覆面達が現れた十字路の商店街の正面の道路沿いからだった。


 そこからなら、商店街付近で発砲する覆面達の弾丸を特殊警察車両を盾にして救急車が進める。


 そして、運転席に居たラーシュは助手席に置いてあるアサルトライフルを手にして、商店街付近に居る覆面達の反対側である、助手席からそそくさと降りる。


 商店街付近に居る二十人以上の覆面達は絶えず射撃を繰り返している。


 反撃の糸口が見いだせない隊員達は、止む追えなく特殊警察車両の横に身を隠し続ける事しか出来なかった。


 それでも黒髪の短髪の男は少しでも戦況を有利にするため(わず)かな隙を付くようにして発砲する。


 少しでも覆面達の攻撃の手数を減らして、駆けつけてくる救急車に搬送しやすくするためでもある。


 「レイジック! ミリイちゃんは⁉」


 ラーシュは慌てた様子で、この場に居ない者の名を口にする。


 まるで、心の底から救援を望んでいるような口ぶり。


 「大丈夫だ! あいつを信じろ!」


 黒髪の短髪の男、レイジックは死に物狂いな面持ちで、この場に居ない仲間を信じていた。


 止む事のない弾丸の嵐。


 相手の出方を窺う暇もない程、一方的な覆面達の銃撃。


 その最悪のタイミングで、救急車がサイレンを鳴らし、やってきた。


 そこで、執念深くライトを狙っていた覆面の者が、奇声を上げ突撃してきた。


 突撃と言っても特殊警察車両が止めている横から迫り来ようとしている。


 それに続き、他の覆面達もここぞとばかりに走りながら発砲を続ける。


 「おいおい、このタイミングでそう来るのかよ!」


 その様子を伺いながら発砲していたラーシュは冗談ではない、と言う様子で、特殊警察車両の横で動揺していた。


 「とにかくこの場を死守しろ! 救急車も撃たせるな!」


 タルヴォは必死な表情でそう伝えると、隊員達は獅子のような形相で特殊警察車両を盾にして覆面達に向け発砲する。


 発砲すると言っても、特殊警察車両から身を乗り出し撃つわけにはいかなく、殆どが威嚇射撃のようなものだった。


 だが、隊員達の射撃に怯む事無く走りながら撃ってくる覆面達。


 すぐ近くまで救急車が迫ってきていた。


 覆面達も特殊警察車両の斜め横にまで走ってきていた。


 隊員達は覚悟を決め、身を乗り出し打って出ようと駆け出そうとしたその時だった。


 発砲音の反響音が微かに聞こえるマンションの屋上。


 そこで、プロテクターを身に付けた一人の若い女性が息を殺し、鋭い目付きで全神経を集中させ、その研ぎ澄まされた意識をトリガーにかける指と、スコープを覗く右目に集中させていた。


 ピンクベージュのおかっぱヘアーで、タレ目の二重瞼。


 そんな温厚そうなスナイパーが瞑っていた左目から涙を流し、すすり泣くようにして「ごめんなさい」と呟きながら引き金を引いた。


 その放たれた銃弾は、正に覆面達の内の一人が、特殊警察車両の横に回り、手にしている銃口をレイジックに向けた瞬間、その覆面の者は左の蟀谷を撃たれ、即死した。


 突然の出来事に、他の覆面達は動揺し、撃ってきた方向に目を向ける。


 すると、すぐに何発もの弾が覆面達の頭部に命中し、次々と射殺されていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ