25章 想い 4話
「この手を放すんだ。リングから足を放した時点で僕の負けだ」
シャルナは落ちそうだと言うのに冷静に話をする。
「勝ち負けの問題じゃない! 僕はお前を助けたいんだ! 僕がお前のヒーローだ!」
ライトは負けじと張り合うかのように語気に力を入れ、必死になって引き上げようとする。
だが、握っているシャルナの手にまで、ライトの血が垂れ流れる。
そのせいで、徐々に滑っていくシャルナの手。
「くそ!」
これ以上ないくらい悔しそうな表情をするライト。
落としてたまるか、と息込んで引っ張り上げようとするが、徐々に滑っていく。
「……もういい。僕の完敗だ。どうやら勝負をする時点で、君と僕との間では観点がずれてたらしい。僕は変革のため、更なる命の押収。君は僕を救おうと躍起になる。どちらが勝利の美酒に相応しいかなんて子供でも分かる図式だ」
「そんな事はどうでもいいんだよ! 死ぬなシャルナ! 死なせないぞ!」
シャルナは尊い瞳で儚げに言うが、ライトは喚き散らすように感情を剥き出しにする。
しかし、等々、結末を迎える。
完全に滑り落ちたシャルナ。
「ああぁ!」
ライトは絶望したかのような表情で離してしまったシャルナに手を伸ばし続ける。
二人との間には瞬く間に距離が出来る。
「そうか。僕は望んでいたんだ。……ヒーローを。子供の頃から」
シャルナは一切の動揺もせず、儚げな表情で囁くように言いながら落ちていく。
落ちた先には、運悪く、プロパンガスを積んだトラックがあった。
そのトラックに積んであるプロパンガスのボンベを、シャルナが突き破ると、とてつもない規模の爆発が起きた。
百五十メートルは離れているライトの上空にまで爆風がくる。
「シャルナー!」
ライトは既に爆発が起きた後でもシャルナに向け手を伸ばしながら叫ぶ。
散りゆく花のようにぐしゃぐしゃに泣きじゃくるライト。
「うあああぁー!」
どうしようもないくらい泣いてしまう。
感情の制御なんて出来るわけがない。
まるでデジャブだ。
カナリアを救えなかったあの日に遡ったかのように。
その終焉は、あまりにも酷なものだった。
ここまでお読み頂き、また評価して下さった読者の皆様方、本当にありがとうございます。
25章「想い」はここで終わります。
次回で最終話です。
是非ご一読ください。




