24章 対話に込められた力 7話
「まさか更生ルームからでも現世の人間を飛ばせるとは。そんな報告は聞いていない」
「すまないなキャンディーちゃん。これにも条件付きでね。話すとめんどうだから言わなかったんだ」
捕まったはずのキャンディーだったが、どこか落ち着いた態度だった。
ヒーロー教官はニンマリ笑いながらそう返答する。
暗い道を照らす星々が一層、増したかのように、この勝利を祝福するかのような感じさえしてきたヒーロー教官。
キャンディーは後ろで手錠を掛けられたままレイジックが上体を起こさせる。
「なあキャンディーちゃん。結局の所、人間なんて罪人だ。私もその一人だ。だから私は償いも兼ね、この世界を平和にしたい。そのための犠牲は既に私は払っている。その事はキャンディーちゃんも知っているだろ? だから手を貸してくれ。一人でも私のように償おうとしている人達に助長して欲しい。キャンディーちゃんにはそれだけの力があるんだ」
珍しく真面目な表情になるヒーロー教官。
「なあ、ヒーロー教官が払った犠牲、て何だかわかるか?」
「いや、俺には分からない」
ラーシュはヒーロー教官の話に気になる点があり、レイジックに話を持ち掛けるが、レイジックもヒーロー教官が払った犠牲と言うのが何だか分からず、二人は首を傾げる。
「ならば今までの私の志は、君の言う助長する力を無下にしてきたと言う訳か」
力を失くしたような声音で静かに語るキャンディー。
「いや、そんな事は無い。タマゴを救い、導いてくれた。タマゴだけじゃない。これまでの多くの人達の背中を支えてくれたじゃないか」
ヒーロー教官はキャンディーの元にまで歩くとしゃがみ、同じ目線で優しく力強い言葉を掛けてくれる。
「俺達も貴方に助力してもらいました。その恩は忘れてません」
「そうですよ。その恩を忘れさせないためにもこれっきりにして下さいよね。悪党の片棒を担ぐ事なんて」
レイジックとラーシュは少し頬に笑みを浮かべながら話す。
「あれは演技のつもりだったが、今思えばどこか心地よかった。君達の知っている私は満更、悪党だったわけではないらしい」
どこか腑に落ちた表情で納得気味のキャンディーは、自身を見つめ直す。
それは、これまでレイジック達、光を照らす(ライトイルミネイト)や、ヒーロー教官やライトの上司であった自覚を持ち始めたのだ。
少なくとも追随して来てくれたヒーロー教官にはどこか後ろめたい気持ちもあったのかもしれない。
自分を尊敬し、愛してくれた存在は、キャンディーに取ってどうでもいい物では無かった。
どこか嬉しかったのだ。
そこで、ヒーロー教官は少し後ろに下がると、レイジック達三人に向け、身体を少しのけぞり、両手を広げ満面の笑みで「ん~。グラッファ・ビーデー!」と声高らかにそう言う。
ポカンとした口で呆然としてしまうレイジック達。
だが、少しすると、キャンディーがクスクスと笑い始め、それに釣られるようにレイジックとラーシュも笑い始めた。
更生ルームは暖かい空気で満たされる。
爛漫とした花が咲き乱れたかのように。
ここまでお読み頂き、また評価して下さった読者の皆様方、本当にありがとうございます。
24章「対話に込められた力」はここで終わります。
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