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22章 こんどはなれよ。ヒーローに 5話

 崩れ落ちそうな身体で果敢に挑むライト。


 左右に振るう拳はギリギリで(かわ)され、カウンターを入れられる。


 頬を殴られたライトは後方に殴り飛ばされる。


 今寝てしまえばどれだけ楽なのか。


 そんな甘い言葉を許さないように再び立ち上がるライト。


 「少しは動きがましになったか? だが、どちらにせよそんなじゃ、その女を助けるなんてのは望み薄だがな」


 ノアルは自信たっぷりの様子で冷笑していた。


 呼吸を乱しながらも、ライトは全神経を集中させる。


 (毒よ、消えろ)と心で思いながら瞳を閉じ、それに意識を集中させた。


 乱れていた呼吸が改善されていき、滴り落ちていた汗も徐々に止まっていく。


 ノアルは何か雰囲気が変わった事を察し、初めて警戒態勢に入った。


 その目も鋭くなっていく。


 ライトは閉じていた瞳を空け、先程とは別人のような目つきでノアルを殴り掛かる。


 その拳はノアルの右頬に当たった。


 体制を崩され、リーゼンキル達はどよめき始める。


 「くっ、やるじゃねえか」


 ノアルは手の甲で右頬を摩りながら、ニヤけた笑みでライトに攻撃する。


 「その毒が治ってきたのはアドレナリンか暗示って奴か⁉ あの女をそこまでして救いたいのか⁉」


 何度も拳を振るいながら怒鳴り散らすように問いただしてくるノアル。


 ライトは先程とは別人のような動きで左右に(かわ)していく。


 「当たり前だ! お前にそう言う相手はいないのか⁉」


 ライトはカウンターで、ノアルを殴り飛ばす。


 悔しさが込み上がってきたのかは分からないが、ノアルの表情に余裕は無く、怒りが滲み出ていた。


 「てめえに何が分かる! 家族だろうが何だろうが、俺にとっちゃゴミ同然だ! 結果を出さなければ迫害され、少しの粗末も許されなかった俺の人生に、お前がしゃしゃり出てくる余地はねえんだよ!」


 ノアルは逆鱗にでも触れたかのように先程以上のスピードでライトを殴り飛ばす。


 ライトは左頬を殴られたが痛み以上に、ノアルの言葉の方が重く心に圧し掛かる。


 まるで昔の自分が、暴力によって地位や権力を得た結果を目の当たりにしているようだった。


 虚しさか、儚さか。


 どちらにせよ、同情や(れん)(びん)の気持ちを抱いてしまいそうになるライト。


 このままライトは暴力で解決してしまえば、心残り以上の何か大切な物が欠けてしまいそうになる。


 「君の経緯は分からないけど、少なくとも暴力は悲劇しか生まない。君が今までしてきた事は同じ仕打ちをしてきたようなものだ。だから目を覚ましてくれ」


 ライトは知っていた。暴力は更なる悲劇しか生まない事を。


 だからこそ、説得を試みる。


 「お前は馬鹿か! 俺に母親を殺されたようなものだ! そんな相手を説得しようなんてのはイカレてるぞ!」


 ノアルは儚い表情で説得してくるライトに向かい罵声を浴びせる。


 だが、ライトの心が揺らぐ事は無かった。


 「確かに君に母さんを殺されたようなものだけど、それとこれとは関係ない。僕は君を救いたいんだ。僕は少しでもこの世の闇を払いたい。君が闇の住人だと言うのなら、僕は救うまでだ」


 真摯な面持ちで正面からそう言うライト。


 この時、初めてノアルの心が揺れ動いた。


 暴力で解決してきてからのノアルは、他者から懇願や敬われる事しかされていなかったため、初めての衝撃だった。


 まさか、こんな自分を救おうと言う男が現れるとは、と。


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