22章 こんどはなれよ。ヒーローに 2話
一般道路を斜め上から見渡せる監視カメラからの映像。
その道路から一台の車が走り出したかと思いきや、突如、三人くらいの十台ぐらいの子供達が走ってきた車の前で止まると、慌ててブレーキを踏み子供達の前で止まる一台の車。
明らかに、わざと、行為でその車を止めた子供達。
その車から下車してきたのは、なんとヴァンだった。
ヴァンは子供にもしもの事があったら大変だ、と思い、慌てて子供の近くに走る。
すると、車の前で事情を聞きながら子供と話していたヴァンの背後から覆面を被った何者かが現れる。
その者は、車の下に何かを仕掛けたような素振りで行動すると、そそくさと撤退していった。
ライトは、その光景にもしかしたら、とある推測が生まれる。
ヴァンは子供達を見送った後、車に乗車した。
そこで、別の監視カメラに切り替わると、その道路を映していた所から再びヴァンの車が走ってきた。
だがそこで、ヴァンの車は何の前触れも無く爆発する。
映像越しでも、爆風がライトの所にまで届きそうな程、痛ましい物だった。
その映像に驚愕するライトは、恐れていた事が起きた事に動揺する。
「そ、そんな」
「……映像はここまでだ」
暗い面持ちで映像を見せ終えたグラハマ。
「もしかして、父さんはリーゼンキルに殺されたんですか?」
動揺を残しながら恐る恐るグラハマに聞くライト。
「ああ。あの子供達は囮で、その隙に覆面を被ったリーゼンキルのメンバーの一人がヴァンの車に爆弾を仕掛けた」
辛そうな面持ちで説明するグラハマに、ライトは深い息を吐き捨て気持ちを落ち着かせる。
「この証拠動画は、私が当時、道路監視員を務めていた時、偶然に見つけた者なんだ。私しか知らないこの情報を、リーゼンキルのメンバーに何故か嗅ぎつけられ、今まで脅され続け、口外しないよう口封じをされていた。すまない。家族にまで危険が及ぶと思い、今まで誰にも見せられなかったんだ」
「……そうだったんですか」
再就職していたグラハマに突然起きた二つの不幸。好敵手だったヴァンを失くし、見てはいけない物を見てしまった事。
だが、グラハマがヴァンを失くした辛い理由はもう一つあった。
「それからこんな事はわざわざ言う必要ではないと思うが、私はヴァンとプロレスラー界に居た時は、同性愛好者だったんだ」
「えっ!」
グラハマの突然のカミングアウトに一驚するライト。
その話を居た堪れない思いで口にするグラハマ。
「君のお母さんに一目ぼれしたヴァンの姿は今でもショックだったよ。私は彼を愛していた。だが叶う訳も無い願いを打ち砕かれた時に気付いたんだ。真面な恋をしよう、と」
その話を真面目に聞くライトはどこか申し訳ない気持ちがあった。
自分の父親に惚れていたグラハマに何故か相憐れむ。
それは大好きだった人を失くした辛さを共感していたからだった。
「今はちゃんとした奥さんがいる。話は戻るが、これを今になって君に見せた理由は、君なんだ」
「どういう事です?」
グラハマの真摯な言葉に意味が分からず首を傾げるライト。
「君が人ひとりの命を肉親が犠牲になっても助けた事だ。だから私は君の行為に感銘を覚え、決心した。せめてヴァンの遺族である君に見せよう、と」
グラハマの決意の固まった表情に逆に感銘を受けたライトは目を大きく開いた。
自分の父親が築いた繋がりに深く感謝するライト。
「決心して頂きありがとうございます。これでようやく、スタートラインに立てた気がします」
ライトは無理に上体を起こし、深々と頭を下げる。
グラハマはその様子をおどおどしながら見ていた。
今までの自分に報われたようなそんな感じがし、戸惑っていたのだろう。
ヴァンの最愛の息子にそう言わせたのだから。




