21章 闇からの不意打ち 5話
レジックとラーシュは嗚咽を漏らしながら泣いていた。
「おい! あそこから銃声がしたぞ!」
そうこうしている内に、先程の銃声で、他の警備員が騒ぎを聞きつけ、レイジック達の所に向かおうとしていた。
「レイジック! 今は行くぞ!」
「……ああ」
ラーシュは鼻を啜ると、レジックを急かせる。
偲ばれる思いで決心したレイジックは心を悲しませながらも立ち上がり、ワグナの後を追う。
二人は等々、追い詰めたワグナに銃を向ける。
壁際まで追い詰められたワグナは恐々とした表情で振り向き、レイジックとラーシュに顔を向ける。
「あんたにいくつか聞きたい事がある」
「なんだと言うのだ⁉」
レイジックが鋭い目付きでワグナにそう言うと、ワグナはおどおどした様子になる。
「安心しろよ。質問に答えてくれれば俺達は何もせず消える」
ラーシュも鋭い眼差しになる。
「分かった」
落ち着き払って承諾するワグナ。
「あんたはシャルナだけでなく、多くの被験者を使って改造手術を施していた。違うか?」
「ああ、そうだ。正確にはアンドロイドガネストロと言い、被験者にナノマシンなども移植し、身体能力を引き上げ、異能を定着させるのが目的だ。異能の件で言うならシャルナ君だけが適応者だった」
レイジックの質問に淡々と話すワグナ。
どうやらワグナは10年前、当時十七歳にして改造手術を施していた外科医でもあった。
「なんであんな事したんだ?」
ラーシュが苛立ちながらそう聞く。
「簡潔に言えばこの世の変革者を造形するためだ。今この世界は虚飾にまみれた善行の世界だ。それを一変させるため、私は立ち上がった」
「何が一変だ。結局、あんたが野放しにしたシャルナは世界の脅威になった。どうやって落とし前をつけるきだ?」
ラーシュは今にでもハンドガンの引き金を引きそうになるほど怒りを抑えていた。
先程、ミリイが殺された事もあり、心の整理が付いていない状態でもある。
「いや、これで良いんだ。世界が闇に染まるなら、それが世界の、いや、人間の答えだ。私は受け入れている」
「何だと」
何かを見据えているような目で語るワグナに怪訝な眼差しを向けるレイジック。
「レイジック。こんなイカレタ信仰者見たいな奴の話を間に受け入れなくてもいいぜ。それよりシャルナ以外の改造手術の適応者は誰だ?」
「そんな事を聞いてどうする?」
うんざりするような態度でラーシュがレイジックを宥めると、すぐに次の質問をするラーシュ。
ワグナは聞かれる事を若干、警戒していた。
「そいつが怪傑人の可能性が高いからだ。シャルナを捕まえてそいつも捕まえるのが俺らの使命だからだ」
睨みつけながらレイジックがそう言う。
「なるほどな。ならここまでこれた褒美として教えといてあげるよ。……キャンデイー・シュトレムだ」
「何だって!」
第二の改造手術の適応者をサラッと口にするワグナにレイジック達は一驚する。
「まさか……キャンディー所長が」
俄かに信じられない様子になるラーシュ。
「大統領!」
そこで、駆けつけてきた警備員達が切羽詰まった表情でワグナの居る所に向かってくる。
「クソ! ここまでだな。レイジック!」
「……ああ」
ラーシュが悔しそうにそう言うと、レイジックもまた悔しそうに奥歯を噛みしめる。
二階の窓ガラスをラーシュが撃ち、ガラスを割った所に飛び込むレイジックとラーシュ。
すぐに外の地面に着地し、ラーシュの車に向かって行くレイジック達。
耳障りな窓ガラスの割れる音を耳にした市民たちは慌ただしい態度になる。
「ご無事ですか⁉」
「ああ。私は心配いらない」
警備員がワグナに憂慮すると、ワグナは落ち着いた様子で返事をする。
ワグナは逃げるレイジック達に悲哀の目線を向ける。
今のワグナの心境は、一体どんなものなのか?
「どうするレイジック?」
「とにかくキャンディー所長の所に行くぞ。武装の準備をしておけ」
運転するラーシュの隣でレイジックは覚悟を決めた目付きで語る。
その言葉にラーシュは戦闘になる可能性が高い、と判断し、ラーシュも覚悟を決めた。
ここまでお読み頂き、また評価して下さった読者の皆様方、本当にありがとうございます。
21章「闇からの不意打ち」はここで終わります。
次章からも是非ご一読ください。
よろしくお願いします。




