13章 知る者 4話
「この後どうします?」
ミリイが全員の顔を辛気な表情で見る。
「とにかく、当てれるところは当たるしかない。俺らはサハリン診療所に行くぞ。それからヒーロー教官達は念のため、ギガネ・アサソンの自宅に向かってくれ」
「え? 僕達なんかが現場に言って良いんですか?」
レイジックの言葉に動揺するライト。
「ただの安否確認だ。俺はまだ殺されたかなんて信じてない。それにどうしても俺らは先にサハリン診療所を調べておきたいしな。」
「分かりました」
レイジックの言葉に覇気を込めて返事をするライト。
「そう言う事なら調べておくか。私も有名人の性事情を知っておきたいしな」
何故かヒーロー教官は顎を摩りながら渋い表情でそう口にする。
「あのう。ヒーロー。主旨がずれていますが」
「何を言っている。あられもない姿と言ってもそれぞれだ。死体でなかったらもしかすると、ハッスルの真っ最中に訪問するかもしれないんだぞ。気を引き締めて行かねば」
ライトが堅実にそう言うと、ヒーロー教官は気合十分な様子でシャドーボクシングをし始める。
「お前は相変わらずルーズだよな」
タルヴォはため息を吐く。
「では行きましょう」
「オーケー」
ミリイの引き締まった声にラーシュも投合する。
そして、ヒーロー教官が全員を更生ルームから現実世界へと送り返す。
「おい! 待ってくれ! 俺はこのままかよ⁉」
取り残された作業員が泣き叫ぶように言うと、ヒーロー教官は「後で私の秘蔵コレクションを見してやる。お前に取って新たな人生の縮図になるだろう。今の内に不安や怒りを溜めていろ。後で爆発させてやるからな。あそこで……アッハハ」と愉快に話す。
すると、作業員は何故か身体を熱くさせながら、生唾をゴクリと飲み込む
その頃、現大統領、クリナ・セプトン、五十五歳が荘厳な建物の大統領室の鏡から町を覗いてた。
「大統領。本当に光を照らす(ライトイルミネイト)を解体しないのですか?」
秘書の男、デバンはあたふたしながらそう言う。
「ああ。怪傑人からは、幾度と解体するよう要請があたが、何とか誤魔化しながら解体させる気はない」
クリナは手を後ろで組みながら不安な面持ちだった。
「何故です? 貴方が大統領の椅子に座れているのも、はっきり言って怪傑人、シャルナ・ヴァースキーのお陰です。彼の援助があり、貴方が大統領になれる最適解のルートを提供してくれた。彼に背く姿勢をあまり見せては彼の恩義に反発する事になります。もしかしたらシャルナ自ら貴方が大統領になれた経緯を暴露でもなされた日には、職を失うだけではすみませんよ」
デバンは落ち着かない様子だった。
もちろんデバンも片棒を担いでいたため、自分の危機にも直面していたからこそ、狼狽えるような素振りを取っているのだ。
「君の言い分は分かる。君も他人ごとではないから尚更心配なのだろう。だが、奴らの思惑通りに動けば、それこそ泥沼に足を取られてしまう。光を照らす(ライトイルミネイト)の存在は、シャルナ達を牽制するための組織と言ってもいい。だからこそ奴らの要求は半分程受けることこそ、均衡が保てる。奴らとて、こちら側が全て承諾出来る程、万能な人間とは思っていないはずだ。安心するといい」
クリナは自分で言っていて、本当にこれが正しいのか迷いながらも、自分に言い聞かせるようにしていた。
「私は正直心配です。彼はまるで世界を手玉に取れる程の人間です。怪傑と呼ばれるだけはあります。貴方がリゼロ局長、直々にリーゼンキルを摘発しないよう根回しをしたのも、シャルナの指示です。見方を変えれば、シャルナは影の大統領のような存在。いつどんな牙を向いてきてもおかしくありません」
深い息を吐き捨てながら、冷や汗が止まらないデバン。
「心配する事は無い。奴がどれだけの大器であっても、実際に富と名誉、地位や権限を手にしているのは私だ。奴が狂犬となったとしてもやりようはいくらでもある」
不敵な笑みを浮かばせるクリナ。
それでもデバンは不安で仕方なかった。
ここまでお読み頂き、また評価して下さった読者の皆様方、本当にありがとうございます。
13章「知る者」はここで終わります。
次章からも是非ご一読ください。
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