13章 知る者 2話
シャルナの話を聞くだけでうんざりしているような態度だった。
「確かに嘘っぽいよな。あんな作業所や火器を取りそろえるなんて額を全て、競馬やギャンブルで当てたなんて」
「うん。私もそう思う」
にわかに信じられない、と言う様子のラーシュとミリイ。
「取り合えずその件は保留にしよう。それよりシャルナは今どこに居る?」
タルヴォが眉を顰めながらそう聞く。
「それは分からない。俺は製造業で働く下っ端にもならないパーツだからな。でも昔、俺がギャング集団で活動していた時にある噂を聞いた。それがシャルナさんとは関係あるか分からないが」
「何でもいい。言ってくれ」
作業員は何かを思い出したかのような素振りでそう言うと、レイジックが話を急かせる。
「実は十年前、スウェーズ地区の南区の診療所、サハリンと言う名前の場所で、人体改造手術を受けられるって話を聞いた」
「待て待て、シャルナの話と関係ないだろ。明らかに脱線してるぞ」
作業員の説明の言葉の話を折るラーシュ。
「まあ、最後まで聞こうぜ」
タルヴォがラーシュを宥める。
「それでそこの手術は過去に一回しか行われてないなんて話も聞く。その手術を受けた者は全知全能のような力を得るとも言われている。俺ら闇の住人しか知らされない裏情報だが、昔から信憑性もあったからまんざら嘘じゃないと思うぞ」
「もしかして、シャルナの力は貴方の目から見ても常軌を逸しているから、改造手術でもされてシャルナは蓋世の力を得たって事?」
作業員の説明にミリイは推理する。
「恐らくな。二年間も怪傑人と活動してても、警察に証拠すら残さない芸当なんてそうでもしない限り考えられない」
「おい。これ筋が通ってる話と言えるのか?」
流暢に喋る作業員にヒーロー教官は唇をひん曲げる。
「僕もそう思います。いくら何でも改造手術なんて現実味が感じませんし」
ライトもヒーロー教官に賛同していた。
「確かにな。だが常に例外ってのは付きまとうもんだ。お前らだってそうだろ?」
タルヴォが顎を摘まみながら思案顔でそう言う。
そこで、ライトとヒーロー教官も自分が現実からかけ離れた力を壮大な都市から得ていた事を思い出すと、自分達もその例外に含まれている事を自覚する。
「念のため調べて置こうぜ。そのサハリン診療所って所を」
「そうだな」
ラーシュが強張った表情でそう言うと、レイジックは首肯する。
「最後にも一つ質問だ。次のターゲットを教えろ。誰を殺すつもりだ?」
タルヴォは眉を顰めながらそう聞く。
「……それならもう手遅れだ」
「――どういう意味⁉」
作業員が俯きながらぼやくように言うと、ミリイが驚愕する。
明らかに死期が既に終えていると言っている口ぶり。
「言葉通りさ。あんたらが潜入した十分後には、リーゼンキルの奴らはスウェーズ地区に住んでいるギガネ・アサソンを殺す予定だった。今までリーゼンキルの奴らは必ず犯罪を完遂させる。恐らくもうそいつは死んでいるだろうよ」
「くそ!」
作業員の傷心気味なその言葉に苛つき嘆くタルヴォ。
「ギガネ・アサソンって、あのメジャーリーガーの……」
「ああ。通称ホームランファイターと呼ばれていた奴だ。年間で二百本のホームランを打ち、盗塁も百五十を超える。正に野球界の神と呼ばれた男だ」
ラーシュがぼんやりとした記憶を辿るようにして言うと、レイジックが淡々と説明する。
ライトは助けてやれなかった事に悲しんだ。
周囲の空気も重くなる。




