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9月15日(木)15:00

 文化祭二日目。家庭部で売り子をしている四月一日くんのところへ五十嵐くんと共に訪れ、クッキーを購入。そのままシフト上がりだという四月一日くんと一緒に、三人で文化祭を回ることにした。




「私は見たいところは昨日だいたい見たけど、二人は行きたいところとかある?」

「正直、特にないな」

「俺はあるぞ。演劇部の劇が見たい」

「演劇部? へー。四月一日くん、そういうの興味あるんだ。ちょっと以外」

「いや、演劇自体に興味があるというわけではないんだが。シャーロット様が出演されるそうだからな。これはぜひとも拝見させていただかなくては」

「そっか。シャーロット様が。……シャーロット様?」

「あー。六倉な」

「むつくら……さん?」




 やれやれといった様子で本名を告げてくれる五十嵐くん。これまでいろんな名前が出てきたし、今さらそれについて何を思うこともないけど。でも、シャーロット様って。様付けなの? 様付けは初めてじゃない? え、偉い人? 勇者パーティーとも敵ともまた違うやつ?




「今度は誰……というか、昨日盛り上がってたルークレインとやらのことも気になってるんだけど」

「盛り上がってたわけではないが。すまんな、せっかくフィフィーが来ていたのに気づかなくて。まさかの失態だ」

「いや、かなり集中してたみたいだし、それは別にいいんだけど」




 昨日の対局後。五十嵐くんの後輩は物凄く悔しがっていたけれど、なんやかんや言いながらも四月一日くんときっちり指し手を振り返って、二人で議論を重ねていた。そういうのを感想戦と言うらしい。ちなみに四月一日くんが私に気づいたのは感想戦が終わった後、本当に最後の最後でようやくといったところだったので、それを指して失態と言ってるわけだ。別に気にしなくていいのに。将棋に関してはほとんど知識がないけど、対局後、五十嵐くんが私に気づいて解説してくれていたので、私としては全く退屈ではなかったし。




「そんなことよりルークレインって……」

「あ! 演劇部の劇の時間、意外とすぐだな。早く体育館に行って席を取ろう」

「え、あ、うん」




 本当はもう少しルークレインのことを聞きたかったのだけど、ふと腕時計を確認した四月一日くんが、うきうきとしながら体育館の方へ駆けていってしまった。え、ちょ。待って。そんな、走って行く感じ? そんなにシャーロット様の劇が楽しみなの? え、シャーロット様ってまさか、お姫様か何かだったりする? 名前からしての勝手なイメージだけど。なんとなく高貴な感じがするし。







 体育館に着き、前の方の真ん中らへんの席に座ることに成功した。走った甲斐もあるというものだ。それからしばらくして幕が開く。内容はどうやら、動乱の幕末を駆け抜ける新選組の物語らしい。高校の文化祭だし、学生の興味を惹けそうな題材を選んだのだろう。皆だいたい、新選組好きだし。しかし新選組の劇ということは、メインキャストはどうしても男子が多くなる。侍役に女子もちらほら混ざっているが、果たしてシャーロット様とやらは一体何役で出演していらっしゃるのか。あのかっこいい侍たちの中でばりばり戦っているのか、はたまたただの町娘役か……。




「シャーロット様……素晴らしい……」

「え、四月一日くん、泣いてる……? というか今、シャーロット様出てるの? え、どれ?」




 そっと隣に視線を向ければ、四月一日くんは静かに涙を流していた。すぐにステージに視線を戻して見るも、今は全く感動の場面ではない。どこからどう見ても、新選組と攘夷志士が激しく刀を交えている、手に汗握る迫力の場面である。彼は一体、何を見て泣いているというのか。というか、今、女子誰もいなくない? ステージにいるの、全員男子じゃない? え、どういうこと。シャーロット様どれなの。もしかしてあの中に、男装が超絶上手い女子とか混ざってる? 私がわかってないだけ?




 演劇の最中にあんまり声を出すわけにもいかず、シャーロット様について詳しく聞くこともできない。結局私は最後まで、シャーロット様が誰だったのかわからないままだった。






 隣の席の四月一日くんはどうやらシャーロット様の演技に泣くほど感銘を受けたらしい。

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